シンポジウム


シンポジウム-1
 「第5回サル類の疾病ワークショップ」
 7月19日(金)15:00-18:00 A会場

責任者:柳井徳磨(e-mail: yanai@cc.gifu-u.ac.jp)
企画者:柳井徳磨(岐阜大)、吉川泰弘(東京大)

<要旨>
近年,疾病のメカニズム解析,医薬品の薬効および安全性評価,遺伝子治療の評価などに,ヒトに近縁なサル類をモデル動物として用いる機会が増えている。サル類を用いた医用実験では,飼育管理に関する技術は確立されているものの,その疾病を含めた病的状態に関する基礎情報は非常に乏しい。そのため,2000年に「サル類の疾病と病理のための研究会」を設立,年2回のワークショップを開催し,サル類の疾病情報を公開してきた(http://www.spdp.net)。今回,以下の講演を予定している。

<プログラム>
1)Hideo Uno(元ウイスコンシン大):サル類の自然発生性病変
2)吉川泰弘(東京大):サル類における結核症について
3)後藤俊二(京都大):サル類における結核症の臨床
4)柳井徳磨(岐阜大):サル類における結核症の病理
5)症例報告
6)総合討論

シンポジウム-2

 「動物観の異文化間比較:
       保全・福祉の実践にむけて」
 7月19日(金)15:00-18:00 B会場

責任者:上野吉一(e-mail: okuma@pri.kyoto-u.ac.jp )
企画者:上野吉一(京都大)、友永雅己(京都大)

<要旨>
 欧米による主導をもとに、種の保全や動物福祉はますます社会的に重要な課題となり、また多くの人々の関心を引くものとなってきた。しかし、こうした議論においては欧米的な価値観に基づき語られることが少なくなく、文化的な視点が欠けていることがしばしば指摘される。「まずは始めよう:Bias for Action」という姿勢を持つことは、保護や福祉活動においては重要である。しかし、社会に浸透させるためには文化による価値観(生命観や動物観)の違いとの調和は不可欠のものである。より具体的な活動を始めるべき現在、これまで看過されてきた「文化的基盤」を取り上げることは時期を得たものと言えるだろう。本シンポジウムでは、日本や欧米を始めとする文化の違いと動物観の関係の整理を試み、動物の保全や福祉を実践する上での文化の位置付けについて意見交換し、その緒とすることを目的とする。

<プログラム>
1)フヘイ バトトルガ(愛知県立大):モンゴル遊牧民と動物観
2)菅原和孝(京都大):殺して食う--グイ・ブッシュマンの動物認識と実践知--
3)徳永道雄(京都女子大):仏教の自然観・生命観について
4)小原克博(同志社大学):キリスト教における動物観の変遷
5)中島定彦(関西学院大):動物の知性の認識と動物観の関係:日米比較
6)総合討論

シンポジウム-3

「霊長類の生殖生物学:
     ラボからフィールドまで」
 7月19日(金)15:00-18:00 C会場

責任者:清水慶子(e-mail: shimizu@pri.kyoto-u.ac.jp )
企画者:清水慶子(京都大)、吉田高志(感染研)、山海 直(感染研)

<要旨>
 生殖生物学は近年、クローン動物作成などに見られるように急速な進歩をとげている。これらの新しい技術は基礎的、応用的研究、さらに臨床分野にも革新をもたらし、多くの成果を上げている。しかし、我が国においては、生殖生物学やその関連領域において霊長類に関わっている研究者はごく少数であり、個別の専門領域に分散している。また、これらの研究者が本学会に必ずしも結集せず、その研究成果も学会に十分に反映されて来なかったことは、霊長類学の発展にとって大きな損失であると思われる。さらに、野外観察・調査を主とする研究者集団と主に室内での実験的方法により研究を進める集団との両者において、集団間の相互交流、相互補完の協力関係が十分であったとは言い難い。本シンポジウムでは、こうした隘路を乗り越えるべく、ラボからフィールドまで、幅広く霊長類の生殖生物学や、それを用いた研究を紹介し、霊長類を軸とした広い視野からの研究のさらなる発展の可能性をさぐる。

<プログラム>
1)山海 直(感染研):サル類の発生工学-基盤技術の開発を目指して-
2)鳥居隆三(滋賀医大):サルの人工繁殖からES細胞、そして・・・
3)中村 伸(京都大):遺伝子レベルからみたオス生殖器官増殖・縮退のホルモン調節
4)渡辺 元(東京農工大):生殖周期と内分泌調節
5)吉田高志(感染研):糞便中の性ステロイドホルモンの簡易測定法とその応用
6)藤田志歩・清水慶子(京都大):野生霊長類の生殖生理と繁殖パラメータ
                  -ラボとフィールドの架け橋-
7)楠比呂志(神戸大):動物園動物を対象とした保全繁殖技術の開発の取り組み
8)成島悦雄(上野動物園):妊娠期におけるゴリラの性ホルモン動態
9)高畑由起夫(関西学院大):"性"と"繁殖"-霊長類のフィールド研究から-
10)総合討論

シンポジウム-4

 「日本国内飼育下チンパンジーの将来展望」
 7月21日(日)13:00-16:00 A会場

責任者:松沢哲郎(e-mail: matsuzaw@pri.kyoto-u.ac.jp )
企画者:松沢哲郎(京都大)、吉川泰弘(東京大)、平井百樹(東京大)、
    長谷川寿一(東京大)、和 秀雄(広島国際大)、
    上原重男(京都大)、松林清明(京都大)

<要旨>
国内血統登録によれば、現在、わが国には373個体のチンパンジーがいる。約2/3が動物園等、残り約1/3が研究施設等で飼育されている。野生チンパンジーは絶滅の危機に瀕しており、野生保全は焦眉の急である。その一方で、飼育下のチンパンジーは多様な研究対象あるいは貴重な遺伝子資源とも位置づけられる。文部科学省は、本年度、ライフサイエンス研究のインフラ・ストラクチャーの整備として、「ナショナルバイオリソース」という概念を打ち出した。チンパンジーもその候補となっている。それに先行して、日本霊長類学会でも、「実験用チンパンジー検討委員会」をたちあげて、飼育チンパンジーの研究利用のあり方について検討してきた(「霊長類研究」16巻3号:306-308頁参照)。チンパンジーをはじめとする大型類人猿については、「野生保全の推進」、「動物福祉の立場にたった環境エンリッチメントの推進」に加えて、「侵襲的な研究の対象とせず、非侵襲的な手法をもちいて人間をより深く理解するための研究に役立てる」こと(SAGA3原則)が、研究者間の実質的な合意になっている。飼育チンパンジーを対象として、現在どのような研究が企画あるいは実行されていて、どのような将来展望があるのか。また飼育チンパンジーの研究利用は本来どうあるべきか。関係者が一堂に会して、その現状と将来に関する意見交換をおこなうことを目的とする。ナショナルバイオリソース計画への対応を焦点として、便宜上、話題提供と指定討論と区分するが、それぞれの立場からの意見発表をお願いし、参加者間で活発な討議をおこないたい。

<プログラム>
1)吉川泰弘(東京大):バイオリソースとしてのチンパンジー
              -研究の多様性、展望、基本的態度-
2)平井百樹(東京大):チンパンジーのゲノム科学研究
3)斎藤成也(遺伝研):「シルバー計画」の現状と展望
4)伊谷原一(林原類人猿センターGARI):GARIにおけるチンパンジーの飼育と研究
5)吉原耕一郎(多摩動物公園):日本の373個体のチンパンジーの人口動態と将来展望
6)西田利貞(東京大):"大型類人猿の権利宣言"とその精神
7)総合討論

<指定討論者>
  和 秀雄(広島国際大)  堀井俊宏(大阪大)
  林 基治(京都大)    長谷川寿一(東京大)
  早坂郁夫(三和化学)   五百部裕(椙山女学園大)

シンポジウム-5

 「ニホンザルの保護管理問題」
 7月21日(日)13:00-16:00 B会場

責任者:川本 芳(e-mail: kawamoto@pri.kyoto-u.ac.jp )
企画、主催:日本霊長類学会・霊長類保護委員会
       理事:松林清明、渡邊邦夫、中川尚史、川本芳
       幹事:大沢秀行、室山泰之、ディビット・スプレイグ

<要旨>
今、野生ニホンザルの保護管理問題はまさに激動のさなかにある。その契機となったのは、明らかに猿害や移入種問題に対する国民的関心の高まりと環境省の新たな政策立案であろう。"野生鳥獣の科学的保護管理"をうたい文句のもとに、各県や地域レベルで、今までとは異なる新たな試みが進みつつある。これまでも野生ニホンザルをいかに保護管理していくかということに関しては実に多様な意見があり、それぞれの現場でたずさわった研究者が大きな役割を果たしてきた。今進められているのは、それが全国的に公開された討論の場の中で、次第に国民的なコンセンサスの得られる方向へ収斂しようとする政策的な流れである。いくつかの主要な問題点について、現状を把握し、何が問題になっていて、どの方向に向かおうとしているのかを、整理検討したい。

<プログラム>
1) 杉山幸丸(東海学園大):野猿公園管理の現状と問題点
                          座長 大沢秀行(京都大)
2) 白井 啓(野生動物保護管理事務所):移入種への対応をめぐる諸問題
                          座長 川本 芳(京都大)
3) 大井 徹(森林総合研究所):野生個体群の保護管理計画をめぐって
                          座長 中川尚史(神戸市看護大)
4)総合討論

シンポジウム-6

「行動を読む:
    行動解析から何がみえてくるか?」
 7月21日(日)13:00-16:00 C会場

責任者:小山高正(e-mail: koyama@fc.jwu.ac.jp )
企画者:吉川泰弘(東京大)、寺尾恵治(感染研)、
    山海 直 (感染研)、小山高正 (日本女子大)

座 長:小嶋祥三(京大)

<要旨>
課題解決は、課題に対して動物が正しく反応したかどうかが問われる。その結果は、 正答か誤答かについての経時的累積数によって表されることがほとんどで、動物が解 決にいたった行動について問題にすることは少ない。たとえば、WGTAを用いて若齢と 老齢ザルの遅延反応を見た場合、個体差が大きくてその反応結果(正答数)から年齢 群間に統計的有意な差が得られないことがある。しかし、彼らが課題に対してどのよ うな行動で反応しようとしているのかを観察してみると、両群が採る戦略には違いが あることが見えてくる。本シンポジウムでは、反応結果をとることにと併せて行動観 察をするとどんなことが見えてくるのかについて、いくつかの事例を紹介してもら い、行動観察の意義やその方法について議論する。

<プログラム>
1) 久保南海子(愛知みずほ大):位置再認における身体的な定位行動
                 ー行動解析で 探る記憶方略ー
2)土田順子(京都大):指迷路の行動解析
3)小山高正(日本女子大):Gamma-Vynyl GABAの抑制効果
4)川崎勝義(星薬科大):行動観察の自動化とその意義
5) 総合討論

<指定討論者>
  牧野順四郎(筑波大)
  根ヶ山光一(早稲田大)
  寺尾恵治(感染研)