参加報告:Breeding and Trade of Nonhuman Primates in China

平成14年9月11日  

社団法人予防衛生協会 藤本浩二

 

今回は、シンポジウム#29Breeding and Trade of Nonhuman Primates in China」の中で発表された、「中国における実験用サルの繁殖と輸出状況について」の発表について提示されたスライドの数値を中心に報告します。

 

Primate Captive Breeding for Biomedical Research in China and Its Trends

by:  FAN, Zhiyong

 from: The Endangered Species Import and Export Management Office of the People’s Republic of China

 

スライド1

中国の実験用サル繁殖コロニー

サル種

輸入種

在来種

実験動物としての利用度

サル頭数

マーモセット

 

95

カニクイザル

 

47,000

アカゲザル

 

20,000

ベニガオザル

 

×

81

ブタオザル

 

×

34

中国におけるアカゲザルとカニクザル繁殖経過

l       アカゲザル

1950年代から繁殖を開始 1984年から輸出開始

l       カニクイザル

1980年代にカニクイザルを輸入して繁殖を開始

1990年から輸出開始

 

解説:中国で実験用に人工繁殖されているサル種はスライドの5種である。アカゲザル、ベニガオザル、ブタオザルは中国在来種で国内生息数(1990年代調査)はそれぞれ200,000頭、70,000頭、900頭である。

現在、実験用サル繁殖はアカゲザルとカニクイザルが中心である。アカゲザルは1950年代から繁殖を開始し、1984年から輸出が始まった。カニクイザルは中国には生息していないサル種であり、繁殖用種ザルを1980年代後期に国境を接するヴェトナム、ラオス、カンボジア、ミャンマーなどの国々から輸入して繁殖コロニーを作った。 カニクイザルの輸出は1990年からである。


スライド2

2002年、アカゲザル、カニクイザル繁殖状況(T)

(アカゲザル/カニクイザル)

地 区

繁殖所

合 計

(アカゲ/カニクイ)

25kgサル

25kgサルの割合(%

中国全体

23

19,88846,932

7,52914,948

3832

北京

2

4,4632,754

1,6411,050

3638

上海

3

69048

3000

440

雲南

3

4,8097,346

2,3903,190

5043

広西

8

4.16129,687

1,1578,380

2828

広東

4

2,7747,097

1,0262,323

3728

江西

1

7100

2160

300

江蘇

1

1,4650

4800

330

浙江

1

8160

3460

420

 

解説2002年当初における中国内のアカゲザルとカニクイザル繁殖コロニーの規模を示す。

繁殖群は全体でアカゲザルが19,888頭、カニクイザルが46,932頭である。繁殖施設は、北京グループ、雲南グループ、広西グループが主要であり この3グループでアカゲザルでは中国全体の54%、カニクイザルは87%を取り扱う。北京グループの中心は Shared Animal Health Technology(Beijing) Co. Ltd、同じく雲南グループでは雲南国立実験用霊長類センター、広西では広西実験用霊長類センターである。

 

スライド 3

2002年、アカゲザル、カニクイザル繁殖状況(U)

(アカゲザル/カニクイザル)

地 区

合 計

(アカゲ/カニクイ)

年間産仔数

年間産仔数/繁殖可能雌ザル数(%

中国全体

19,88846,932

5,31215,657

6179

北京

4,4632,754

1,131849

7085

上海

69048

70 0

360

雲南

4,8097,346

1,121 2,130

6175

広西

4.16229,687

1,20810,260

6485

広東

2,7747,097

9302,418

5062

江西

7100

102 0

260

江蘇

1,4650

550 0

790

浙江

8160

200 0

790

解説:各繁殖施設での(昨年度)産仔数と繁殖効率を示す。

繁殖用雌ザルは平均年間にアカゲザルで61%、カニクイザルで79%が出産する。

スライド4

中国からの実験用サルの輸出数

年 度

アカゲザル

カニクイザル

2001

2,363

6,765

2002

1,935

6,451

1999

1,098

4,980

20012000 増加率

22

5%

20011999 増加率

115

36%

 

主要輸出国 その他の輸出国
アメリカ合衆国 スウェーデン
日本 スイス
英国 オランダ
フランス スペイン
ドイツ 南アフリカ
カナダ

解説:2001会計年度における米国への輸出数はアカゲザル2,766頭、カニクザル1,855頭の計4,621頭。日本へ輸出数は4,059頭であった。

 

スライド5

中国のマカク属ザル資源と2002年生産予想

 

アカゲザル

カニクザル

自然資源サル数

200,000

0

人工繁殖群サル数

19,888

46,932

繁殖雌ザル数

8,732

19,910

生産数(離乳数)

7,529

14,948

繁殖施設数

1925

1625

優良

優良

輸出

3,80227%

8,48235%

国際輸送

優良

優良

需要

増加

増加

リスク(問題点)

国際空港

国際空港

(利用)傾向

確実

確実

資源の能力

大変良い

大変良い

 

解説:中国での実験用サル類の生産はなお増加傾向で質的にも良くなる予想である。

問題点は北京以外では繁殖施設の近くに国際空港が無く、輸送に時間がかかる点である。


スライド6

2001会計年度米国サル輸入状況

仕 出 国

頭 数

サル種

中国

2,766

1,855

カニクイザル

アカゲザル

モーリシャス

3,440

カニクイザル

ヴェトナム

3,120

カニクザル

インドネシア

1,653

40

カニクイザル

ブタオザル

フィリピン

900

カニクイザル

合 計

13,774

 

 

スライド7

2001会計年度でのヨーロッパ連合でのサル輸入数

仕 出 国

頭 数

サル種

中国(74%

557

825

アカゲザル

カニクイザル

イスラエル(12.5%)

235

カニクイザル

モーリシャス(10%

190

カニクザル

EU内繁殖数

 

311

253

アカゲザル

カニクイザル

 

まとめ: 日本における中国からのサル輸入数は19982,491頭、19992,890頭、20002,940頭、20014,059頭である。中国からのカニクイザルの輸出は日本が一番多い。

中国の繁殖グループでは、霊長類研究センターを中心にサルコロニーの微生物学的モニタリング、 モデル動物の作製等技術改善を進めている。

 学会配布の資料中に2001年に創設された広東省肇慶市実験動物研究センターのパンフレットが含まれており、アカゲザル1,200頭、カニクイザル2,800頭の繁殖コロニーを保有していること、各種受託試験が開始されている記載があった。この研究センターは広東地区のサル繁殖施設の中核となり、広東地区が中国内第4のサル繁殖グループとなることが予想された。

 このシンポジウムでは他に、新日本科学グループの劉さんが、「日本のサル輸入検疫について」、またShared Animal Health Technology(Beijing) Co. Ltd 社長の徐さんが、自社北京サル繁殖施設の紹介と、本年4月にワシントンDCにおいてNational Academy of Science, Institute for Laboratory Animal Research が主催した「The Future of Nonhuman Primate Resources」について報告した。

 スライド中の数値は学会抄録、発表のそれらと多少異なっていましたが、ここではスライド情報をもとに、報告しました。                     以 上