基礎の遺伝疫学講座   安田 徳一 (20/12/20)


 

5. 家系

 指標と例外ともいえる血縁関係を活用した対の血縁者のデータを用いて、遺伝と文化伝達の分析をする方法を前章で紹介した。 しかしこの分析法の目標は家系においても何ら特別な長所があるというわけではない。本来の目標は連続変異から主座位を決定することである。ここで便宜上、主座位とは「その効果が通常、集団平均から1標準偏差以上の変異を表す大効果表現型megaphenic」とする。

 

5.1. 家系の点検

完全浸透の単純な遺伝様式は、以下の基準で家系を点検することで推定する。

1.   常染色体優性. 

(a)    形質の伝達は世代から世代へと跳ぶことなく、すなわち連綿と続く。

(b)   突然変異を除き、どの罹患者にも罹患した(少なくとも)片親がいる。

(c)   健常なホモ接合と罹患したヘテロ接合の結婚からの罹患者の分離比は1/2である。

(d)   両性における罹患者数はほぼ同数である。

2.   常染色体劣性.

(a)    まれな形質で、きょうだいを除き両親や他の血縁者は普通健常である。

(b)   形質の遺伝子が劣性で両親が罹患しているならすべての子どもは罹患する。

(c)   両親が健常でどちらもヘテロ接合なら、子どもでの罹患者の分離比は1/4である。

(d)   両性における罹患者数はほぼ同じである。

(e)   形質がまれなら、両親は近親婚である尤度が高い。

3.     伴性優性.

(a)    ヘテロ接合の母親は両性の子どもに同じ割合で伝える。そのとき罹患者の分離比は1/2である。

(b)   ヘミ接合の男子はその形質を娘に伝える。分離比は娘で1、息子で0である。

(c)   突然変異は別として、どの罹患こどもにも罹患した(片親)がいる。

(d)   形質がまれなら、娘での頻度は息子での頻度のほぼ2倍である。

4.     伴性劣性.

(a)    形質がまれなら、両親と血縁者は通常健常であるが、母方のおじ、あるいは母方の男子血縁者に罹患者がいる。

(b)   ヘミ接合の罹患男子はどちらの性の子どもにも形質を伝えることはないが、娘はすべてへテロ接合の保因者carrierである。

(c)   ヘテロ接合の保因者女子は健常であるが、息子にその形質を1/2の分離比で伝える。また娘の1/2は健常者であるが保因者である。

(d)   保因者母のXO娘は別として、罹患女子は保因者母親と罹患父親から継承する。集団におけるその頻度は罹患男子の頻度の平方根にほぼ等しい。

(e)   突然変異は別として、どの罹患男子も保因者母親から継承する。

 その他の遺伝様式も見つかっている。Y連鎖、付着X染色体などの染色体突然変異、ミトコンドリア性(母性遺伝)、それに生殖細胞モザイク、インプリンテングなど分子遺伝学のレベルで明らかにされた遺伝様式がある。

 形質によっては、その遺伝因子は他方の性で伝達するが、一方の性でしか表れない。若年性禿頭、膣閉塞や生殖生理あるいは性分化に関係する諸形質は限性遺伝をするという。遺伝子が劣性であれば、一方の性に限ってその遺伝様式が成り立つ。常染色体性優性で男子限性であれば、伴性劣性と間違えることがある。どちらの場合も健常保因者の分離比は息子で1/2、娘で0である。しかし、次の相違は明らかである。

1.     常染色体限性遺伝なら罹患ヘテロ接合の男子の息子の分離比は1/2であるが、伴性遺伝での分離比は0である。

2.     伴性遺伝子は他のX連鎖遺伝子により組換率の減少を招くかもしれないが、常染色体遺伝子は他の常染色体遺伝子と一緒のときにのみ組換率の減少を起こすことがある。

3.     染色体不分離により、伴性劣性遺伝子の保因者から罹患XO娘が生まれることがあるが、これは臨床、細胞学所見から鑑別診断できる。

4.     遺伝子がまれなら、罹患者全員のうち弧発例の頻度は常染色体限性遺伝ではm/(m+1)、伴性劣性遺伝ではmu/(2u+v)である。ここでmは罹患男子の選択係数、uvはそれぞれ卵子、精子での突然変異率である。突然変異率に性差がなければ孤発例の頻度はm/3となる。致死に近い遺伝子であれば、m→1m/(m+1)1/2となる。これから弧発例が1/2より有意に小さければ伴性遺伝の証拠となり得る。

浸透率が減少、あるいは診断前死亡の相違があると、視察で多因子遺伝や文化伝達との区別が難しくなる。パラメータを推定する統計的方法や婚姻型に応じて現れる形質の頻度を検定する仮説が必要となる。

 

5.2 分離比

遺伝の機構はある特定の婚姻型とその子ども達(この構成を核家族nuclear familyという)について、与えられた情況でその最終的な効果の特徴的な表現型頻度を観察することで推定することができる。この特異的な頻度を分離比segregation ratioという。これには古典的なメンデル比1/21/49/16だけでなく、差別死亡率による変更や遺伝機構がわからない経験的な比率も含める。たとえば、ある婚姻型からの子どもの1/4がある遺伝子型であると期待されるとき、その80パーセントが特徴的な異常表現型を表したとする。このとき分離比は(1/4)(0.80)=0.20である。また遺伝の機構が分からなくても特定の婚姻型からの子どもの20パーセントがある表現型のとき、同じく分離比は0.20だという。分離比は仮説あるいは一連の婚姻型の分析で経験的に特定されるが、調査データから観察される実際の分離比は遺伝子頻度、偶然、それにデータの集め方などの要因の影響を受ける。

 簡単のため分離する表現型は2種類とし、それらを健常normalと罹患affectedと呼ぶことにする。n種類の表現型があるとn-1通りの独立の対の組が考えられるが、これで一般性が損なうことはない。同胞の大きさsに罹患子ども数rとする。健常あるいは罹患と分類する子どもの集合を同胞(きょうだい) sibship、家族family、交配matingとなどと呼ぶが、これらの用語を同義的に用いることがある。罹患こどもがいないとき、婚姻型は分離していないnonsegregating (r=0)という。少なくとも1名罹患子どもがいる(r>0)ときは分離しているsegregatingという。健常と罹患のこどもがいる(1<r<s)のとき、共分離doubly segregatingという。分離比pは完全選抜のとき与えられた交配型の罹患子どもの期待値である。ただしこの比は一様な連続変量とする。しかし罹患こどもの期待頻度がはっきりと不連続、すなわち一部の婚姻では低く、他方では高いなら、pの値には後者の高リスク家族の分離比を用いる。手元のデータでどのモデルが適切かを決める。

 両親をサンプルして、子どもの表現型を調べる方法を前向き調査prospective studyという。分離比pを一定として、分離していない家族を除き、同胞の大きさsで罹患こどもがr人の分布は二項分布で表すことができる。 

     P(r|s,p)=sCrpr(1−p)-r     0<p<1, 0<r<s   sCr=s!/{(s-r)!r!} (二項係数)} 

分離比分析segregation analysisで表れるこのような分布について、統計学の最尤法を適用して分離比についての推定および検定ができ、問題とする疾患の遺伝様式を推論する。

 多くの場合、分離比pは一定であるが、分離していない家族(その割合がh)があって本来分離する家族であるにも関わらず、罹患こどもが観察されない家族{その確率(1-p)s}と判別することが出来ないことがある。そのとき、家族の大きさsの罹患子ども数rの分布は付加二項分布augmented binomial distributionになる。

        P(r=0|s,p) = h + (1-h) ((1-p)s        

                                     0<p,h<1,  0r

        P(r>0|s,p)= (1-h) sCr pr(1−p)-r 

ホモ接合性、表現模写、それに二価対立遺伝子bivalent alleleにより分離することのない家族が含まれていることがある。優性対立遺伝子のホモ接合である確率はその頻度から求めることができる。たとえば、2つの対立遺伝子aAの頻度をそれぞれq1-qとする。交配型A_×aaA_がAAなら分離することはない。この条件付確率は 

         h=P(AA| A_)=P(AA)/{P(AA+P(Aa)}=(1-q)/(1+q) 

である。 同様にして、交配型A_×A_では両親が共にAAのとき分離することはない。

          h={1-P(AA| A_)}2=1-{(1-q)/(1+q)}2=(1+3q)(1-q)/(1+q)2 

複対立遺伝子への適用は容易に行うことができる。近親婚や同類婚などの完全混合からの若干のゆらぎがあっても、hの値は頑健robustnessである(Yasuda 1966)

 分離していない家族の原因の一つに表現模写が考えられる。表現模写は問題とする形質の原因遺伝子以外の要因がその形質を表すことである。しかし分子レベルでは状況が異なる。たとえば受胎後最初の3ヶ月までに母親が腹部にX線を被ばくすると胎児に常染色体劣性の精神遅滞を伴う小頭症に類似の障害を生じることがある。網膜芽細胞腫はまれな不完全優性であるが、一部は体細胞突然変異による表現模写である。胎内感染による重篤の統合失調あるいは聾唖はその原因が表現模写なのかも知れないことがある。

 技術的な誤りによる表現模写もある。たとえばMN×M婚姻型でMN型の子どもの全体の確率はh + (1-h) ((1-p)sで表せる。ここでhMN型の親は実際には遺伝子型がNN型であるのに抗M血清に反応した確率である。この分布は技術的な誤りが発表された家族データで、報告されたMN型の子どもが多すぎる、したがってMN胎児の選択的生存preferential survivalあるいは分離比の歪みmeiotic driveを、説明するに十分な頻度であるのかないのかの論争があった。大規模な調査が行われ、MN型の過剰は示されなかった (Morton & Chung 1959)

 分離できない第3の可能性の二価対立遺伝子bivalent allele2つの因子が相反repulsionのときよく見られる。まれな二価対立遺伝子の例がh>0p=1/2Gm1,3についてアジア由来の集団、RhC,cについてアフリカ由来の集団でみつかった(Morton et al. 1966)

 

5.3. 不完全確認incomplete ascertainment

 まれな形質について罹患子どもを発端者として家族を調べることが臨床医にはむしろ普通である。親が発端者の場合は前向き調査prospective studyであるが、その確率は親の表現型についての条件確率であることに注意するならば問題はない。しかし子どもが発端者の場合、これは後ろ向き調査rertrospective studyといい、分離していない家族はデータから確実に抜ける。このようなデータの取り方を不完全選抜incomplete selection という。この状況は分離比分析に重大な問題を提起する。

 もっとも簡単な場合として、確認の確率probability of ascertainment、πを定数とする。確認の確率はある集団の一罹患者が発端者として検出される確率である(4 .1参照)。この仮定でr人の患者きょうだいのうちa人が発端者である確率は次の二項分布で表される。 

               P(a|r,π)= rCaπa(1-π)r-a 

したがってr人の患者がいる家族で少なくとも1人以上発端者のいる確率は 

               P(a1|r,π)=rCaπa(1-π)r

                      = 1-(1-π)r 

狽ヘa=1,2,3,..,rについての合計をあらわす。

分離比pが定数で、s人の子どもがいる家族が確認される確率は 

              P(a1|s,p,π)=sCr pr(1-p)s-r{1-(1-π)r } 

                            =1-(1-pπ)s 

ここで狽ヘr=1,2,3,…,sについての合計を表し、pπは子ども一人が患者で発端者である確率であるから、(1- pπ)ss人の子どもいずれもが発端者でない確率を表す。したがって1-(1-pπ)sは子どもから確認するs人の子どものいる家族の確率である。同胞の大きさsの家族を確認する確率ということもできる。さて次の条件確率を検討しよう。 

               P(a1|s,p,π)=P(r|s,p)P((a1|r,π)/P( a1|s,p,π)

                             = sCr pr(1-p)s-r{1-(1-π)r }/{1-(1-pπ)s}  

この式で極端な場合としてπ=1とπ→0がある。前者は切端選抜truncate selection、後者は単独確認single selectionという。π→0のとき(1-π)r1-rπであるから、上式は次のように書き改めることができる。 

               P(a1|s,p,π→0)=s-1Cr-1 pr-1(1-p)(s-1)-(r-1) 

単独確認は発端者の同胞の完全確認といえる。より具体的に、データは発端者1名の同胞の集合である。残念ながらこの結果はπ>0の場合では一般に成立しない。

 確認の確率πが定数という仮定は成立するのかは調べてみる必要がある。ほとんどの場合その情報は、患者r人を確認した家族における発端者の数aの分布に依存する。 

            P(a|a1,π)= Cπa (1-π)r-a }/{1-(1-π)

同胞あたりの患者が1名の単離例isolated caseの場合、πが定数であることを検定するすべはない。

 状況によっては単離例からでもπについての情報が得られる。たとえば各患者についてt回の独立な確認の出所(開業医、病院、出生あるいは死亡診断書、患者グループなどを経由して患者を確認する)がそれぞれ独立にziの確率で確認すると、発端者をt回確認する確率は切れたポアソン分布で表せる。 

            P(t|t1,m)=mte-m/{t!(1-e-m)} 

ここでπ=1-e-mm=z1+z2+…である。

 単離例と家族例の両方を用いるのでπについての多くの情報がtの分布から得られる。特に患者における発端者の分布は発端者あたりの確認の分布の1/4以下の情報である。しかし、独立確認と一様確認の確率の仮定に基づく推定値はおそらく異質性は有意であろう。一開業医からの報告は他からの報告が少ないであろうから、一つの情報源は別の情報源の可能性を少なくする可能性が出てくるのでπは過少評価することになる。一方、確認確率が定数であるとする発端者の分布はπを大きく推定することになる。これは、そのうちの1つが独立に調べられることがあっても、2人以上の同胞を発端者として数えてしまうからである。2つの独立な情報源をプールして得られる値は過少推定値の方に近い。プールした値は別々に求めた値いづれよりもよいことが経験的に知られている。

 確認モデルを明確に理解しない限り、確認を適切に定義したとは言えない。同じ医師による重複確認は通常独立とは成り得ない。たとえば、ある発端者がある病院のカルテで確認されたなら、医師への照会や相談は、病院カルテで独立な発端者として報告されたものでない限り、その確認は独立な情報源としてカウントしてはならない。

 発端者ごとの確認の分布は別の形をとることもできる。たとえば、確認の独立な情報源が少なければ、i番目の確認の確率をziとすると、π=1-(1-z1)(1-z2)…である。確認の平均数がガンマ分布あるいはziがベータ分布をするとして、独立の仮定は除くことができるかも知れない。いづれかの方法で妥当なπの推定値が得られるのであろうが、確認の定義には、収集の際の十分な注意が必要である。

 

5.4 弧発例sporadic case

 多くのメンデル性疾患は主遺伝子によるため高リスク家族でも、場合によっては弧発例があるのは例外でなくむしろ普通である。弧発例は突然変異、表現模写、技術上(診断など)の誤り、夫婦外の子ども、劣性遺伝子のヘテロ接合での発症、染色体不分離、ポリジーンでの発症、等と様々である。これら高リスクとなる別の病因による弧発例は偶然の単離例と区別しなければならない。主遺伝子の高リスク家族であっても、罹患子どもが偶然1名の家族は単離例である。弧発例と偶然の単離例の区別は表現型でできることもある。また、単離例と家族例を用いて判別関数を利用して分けることもできる。多くの場合表現型による区別は難しい上に実際的でもないが、弧発例の割合は収集した集団から統計的に推定することができる。

 まず、最初に推定する一般的な方法として単離例と家族例の分布を用いる。xを集団のすべての症例のうち弧発例の割合とする。そうするとs-1人の健常同胞のいる単離例が弧発例である確率はx/{(1-x)(1-p)s-1}である。ここにpは高リスク家族の分離比である。単離例のいる家族は弧発例であるか偶然単離例であるかのどちらかである。これを単発例simplexといい、2名以上の患者がいる家族は多発例multiplexという。

 弧発例の考えは、家族には高リスクと低リスクの二通りあるという前提に立っている。低リスクがかなり小さいとほとんどの低リスクの家族は弧発例であろうし、多発例家族は高リスクであろう。分離比pと確認の確率πが定数であるとすると、不完全選抜での同胞の大きさsでの罹患者数rの分布は

次式で与えられる。 

       P(r=1|a1,x,s,p,π)=  [spπ{x+(1-x)(1-p)s-1}]/[xspπ+(1-x){1-(1-pπ)s}]

       P(r>1|a1,x,s,p,π)= sCr pr(1-p)s-r{1-(1-π)r}]/[xspπ+(1-x){1-(1-pπ)s}] 

x→1、弧発例の割合が十分大きいときには、高リスク家族だけに注目して、多発例の家族に限ったデータを集める。このような選抜によるモデルや2人以上の発端者がいるモデル、さらには特定の性にすくなくとも1人患者のいるモデルについての分布も求められている(Morton 1969)

 弧発例と高リスク症例とで何等かの量(たとえば平均近交係数)的な相違がみつかれば孤発例xを含む分離比分析で有用である。μFを多発例の平均値、μsを単発例の平均値、yを弧発例である単離例発端者とすると、単離例での期待値μI 

           μI=yμs+(1-y)μF  これから y=(μF-μI)/(μF-μs). 

一つの方法は単離例と弧発例の平均値に有意差があるかどうかを検定する。たとえばμsは既知としよう。家族例はまれな劣性遺伝子が原因であるなら、家族例の平均近交係数μFは一般集団の平均近交係数より高くなる。この場合一般集団の平均近交係数はμIに相当する。そうすると、単発例発端者の数をn、多発例発端者の数をNとすると、xの推定値は

                       x=y{n/(n+N)} 

ここにn/(n+N)は集団における単離例の割合である。

例題5.4.(5.4.1.)は聴覚障害者のデータである。確認の確率πは 例題4.4.1でπの値については0.5661であった。表4.4.1で発端者が2名以上(r,a2)のきょうだいについて確率 

            P(a|a2,π)= Cπa (1-π)r-a }/{1-(1-π)-nr(1-π)}   r

からπ=0.3848±0.0010が得られる。両者の荷重平均をとり、π=0.5606をこのデータの分離比分析に用いることにする。

 両親の近親婚について調査が行われたので、孤発例の割合xを推定することができる。後天性聴覚障害者の集団での平均近交係数αは35.1×10-4、先天性聴覚障害者で単発例である両親の平均近交係数FT206.5×10-4、同じく多発例の両親のそれはFU=262.3×10-4であった。単発例のうち孤発例yである割合は FT=yα+(1-y) FUから 

                   y=( FU-) FT/( FT-α)=0.2456 

また単発例数n=755、多発例数N=105から、c=755/(755+105)=0.8779が得られる。したがって孤発例の割合はx=cy=0.2156となる。

 例題5.4.2 聴覚障害が劣性遺伝という仮説を検定しよう。 

     表5.4.1. 健常な両親の子どもにおける視覚障害の分布(Furusho & Yasuda 1973

            s r    1     2     3     4     5     6    

            1       56                                   56

            2      140    25                            165

            3      149    42     7                      198

            4      136    46     7     2                191

            5       63    37    10     2     1          113

            6       40    17     4     1     1     0     63

            7       23    19     4     2     0     1     49

            8        2     6     3     2     0     0     13

            9        2     0     2     2     0     0      6

           10        3     0     2     0     0     0      5

           11        0     0     0     0     0     0      0

           12        0     0     0     1     0     0      1

                 614   192    39    12     2     1    860

s=きょうだいの大きさ、r=各きょうだいでの聴覚障害者数。 

確認の確率が0.5606、孤発例の割合が0.2156、それに両親が健常者の子どもで視覚障害者の分離比は1/4である場合は1/2であるから、 

    両親が健常者の核家族データについて、帰無仮説:p=1/4, x=0.2156,π=0.5606 

を用いて表5.4.1.のデータについてχ2検定あるいは尤度比検定を行う。ここではχ2検定を行う。三つのパラメータpx、πについてのχ2(df=1)はそれぞれ2.97 1.272.6)で、5%水準で帰無仮説は捨てられない。π=0.5606の状況でpxの最尤推定値をもとめるとp=0.2276およびx=0.2515が得られた。すなわち、このデータは視覚障害の約79%が劣性遺伝でその浸透率f=0.2276/0.25=91%であると統計的な解釈が得られた。

文献を読むと用語、弧発例と単離例や家族例はかなり曖昧な意味で使用されている。弧発例は単発例より狭い意味で、同意語ではない。弧発例、単離例は遺伝モデルでの用語である。単発例と多発例はデータでの用語で同胞についてであり、家系についてではない。用語の混乱はその一旦は弧発例の割合についての誤った考えに負うところがある。

 

5.5 混合モデル

ヒトの分離比分析は20世紀初頭から行なわれてきたが、弧発例を除いた分離比pが定数の場合に限られていた。数百のメンデル性形質がこのモデルにより分析された。モートン(Morton 1959)は弧発例をモデルに組み込みコンピュータの利用を図った。これは複合分離比分析complex segregation analysisの最初で、再起リスクが与えられた婚姻型の家族間で変動するモデルへの拡張の始まりであった。次の段階はポリジーンの連続形質あるいは離散(しきい)形質であった。

 この時点で遺伝疫学者の選択は2つあった。文化伝達を無視した微小効果のポリジーンの一般化した単一座位モデルと文化伝達を無視した主効果(主座位)ポリジーンモデルである。さまざまな遺伝様式は互いに排他的ではないから、主座位とポリジーンを同時に考慮した混合モデルを考案することが自然の成り行きであった。モートンとマックレーン(Morton & MacLean 1974)は核家族について、同胞については環境を共有とするが親子の遺伝伝達と文化伝達を一緒に扱う混合モデルを開発した(5.5.1)。同類交配、指数、異常な関係、文化伝達の経路分析をすべて組み込むのが最良であるが、計算量が厖大になるのでそうはしなかった(開発当時のコンピュータの容量のため)。経路は遺伝伝達と文化伝達を分ける最善の方法の一つであるので、分離比分析を実行する前に行うのが望ましいのである。両者の方法で分散成分の推定値ではよい一致が見られた。

実用面から1座位あたり2対立遺伝子を取り上げた。稀な優性遺伝子の2座位以上では分離比

では検出できなかったが、重複したまれな劣性遺伝子は罹患親の数による婚姻型を比べることで検出できた。したがって2対立遺伝子単一座位という大きな単純化(他に実務的なモデルはない)は費用の点でも容認できる。主座位によるそれぞれの遺伝子型は分散の等しい正規分布をするとする。

 混合モデルは分離比分析を変えた。個体が健常であるか患者であるかの分類はもはや必要ないし望ましいものではない。そのかわり、研究者はモデルを満たす連続変量を探す。そしてそれがうまく行かないときにのみ離散的分類を受け入れる。二分割や三分割(健常、中間、患者)は中間型を受け入れないか受け入れるかによって用いる。観察された表現型値の分布は3つの遺伝子型AAAaaaそれぞれの遺伝子型値の平均と分散が異なる正規分布の合成であるというモデルを取り上げる。表現型値がしきい値Zを越えたら罹患、M(<Z)より大きくZより小さければ中間(境界)型とする。実務上に関しては、患者の定義は連続形質の分離比分析でモデルの妥当性と最適の

 

          表5.5.1 家系データについての混合モデルのパラメータ

      記号             定義                                                         

       V            集団の表現型値分散

       U            集団の平均

       t             主座位についてホモ接合間の相違displacement 

       d            主座位でのドミナンス       

       q            主座位での対立遺伝子頻度

       H            小児期の遺伝率

       HZ            成人記の遺伝率

       x            突然変異による孤発例の割合 

       m            選択係数(伴性遺伝のみ)                        

 核家族でHHZは遺伝性遺伝率(H)ときょうだい共有環境の伝達(B)で表すことができる。ただし親から子供への環境伝達はないものとする。これは核家族を拡大した家系には適用できない。

 

しきい値が定まるまで待つべきである。味盲(PTC感受性)分布が二峰性の場合、主座位が確信をもって言えるなら、混合モデルでの分離比分析ではドミナンスが完全か残余の(ポリジーンか環境

による)家族変異が無視し得るかの検定ができる。主座位がありそうにないときでも、不完全確認に対して適切な補正ができる分離比分析は経路分析に勝っている。

 古典的分離比分析では分離比が基本パラメータであったが、その役割は混合モデルではそうでなく、婚姻型内だけでなく婚姻型間の再起リスクを予測するより基本的な変量の関数となっている。

 

      5.5.2 経路分析と分離比分析から求めた遺伝率と文化伝達の比較(Morton 1982)

                                    経路分析        分離比分析

           形質                    h2     c2           H     B    

         VLDLコレステロール       0.46   0.01        0.33   0.08          

         LDLコレステロール        0.39   0.12        0.28   0.14          

         HDLコレステロール        0.31   0.11        0.38   0.02          

         トリグリセライド         0.18   0.08        0.37   0            

         コレステロール           0.49   0.04        0.51   0.06          

         高脂血症                 0.29   0.06        0.48   0             

         尿酸値                   0.27   0.12        0.34   0              

         収縮期血圧               0.24   0.16        0.28   0.08            

         拡張期血圧               0.19   0.09        0.24   0.06 

分離比分析による遺伝率Hは経路分析によるh2より大きい傾向がある。一方、分離比分析による文化伝達率Bは経路分析によるc2より大きくなっている。                        

 

 分離比分析は分布の仮定からのずれにたいして経路分析より感受性が高い(5.5.2)。非対称性は主座位の存在をシミュレートすることがあるが、非対称性の除去は主座位の存在する証拠を弱めることになる。量的形質の分布の問題を避ける三分割は検定力を相当に失う。主座位にデータを合わせるポリジーンモデルの可能性は著しいものがある。大きな効果、低遺伝子頻度、それにドミナンスは解決に都合のよい面であるが、冪変換、多分割、罹患血縁者を経由した選抜、それに結婚型間の異質性の検定をうまく利用することが主座位の存在を見極めるのに大事であろう。

主座位での突然変異を混合モデルに取り入れた。健常ホモ接合の低浸透率は弧発例になるから、その他の弧発例ははっきりと認めることはできない。量的形質の外れ値は特別な問題を提起する。それが微小効果の正規分布に属さないのであれば、まれな劣性対立遺伝子をシミュレートしているのかも知れない。切れた分布に冪変換して避けることができる。異常値は簡単に罹患者と分類することできるが、診断で量的形質の修正ができればこれも適切である。このような注意を払えば表現模写は主座位をシミュレートすることはない筈である。

 

5.6. ドミナンスとエピスタシス

 混合モデルはポリジーン、主座位それに環境の諸効果が易罹病性について相加的であることを仮定し、ドミナンスは主座位に限り、非対立遺伝子間の相互作用エピスタシスepistasisはないものとしている。これらの仮定をする主な理由として、ヒトのように実験のできない場合のデータではポリジーンのドミナンスとエピスタシスと同胞に共有する環境効果との区別が出来ないことにある。さらにポリジーンのドミナンスとエピスタシスは実験生物でもあまり大きくなく、環境効果が家族内で効果的に確率化されていないし主座位効果を見分ける努力が行われていない。

 ポリジーンのドミナンスとエピスタシスについては長い伝統的な主張がある。これは20世紀初頭からの生物統計学者とメンデル学派の論戦に根ざしている。メンデル学派は血縁者間の相関はドミナンスの任意の分布とエピスタシスのあるタイプの分布を伴うメンデルの法則から予測できることを示し、勝利した。しかし、その後どちらのグループもポリジーンのドミナンスとエピスタシスが高等生物の完全混合集団で重要であるかどうかについて明らかにすることはなかった。

  ドミナンスとエピスタシスについての伝統的な強調で、いくつかの点が明らかになった。

(a) 有害遺伝子はホモ接合の障害(適応度の低下)が少ないほど相加的に近い。

(b) 主座位の量的効果ですら、しばしば相加的に近い。たとえば典型的な電気泳動で区別できる対立遺伝子は酵素活性に関して相加的である。

(c) 数学的に微小効果は一次微分で近似できる。すなわちほぼ相加的である。

(d) 近交系の交配で検出できる相互作用は(遺伝子頻度がほぼ一定の)任意交配集団では通常小さい。

(e) したがって、ポリジーンのドミナンスとエピスタシスを無視するという仮定は、家族類似性あるいは近親婚効果に関する観察データを検定するのに有用である。

 

5.7. 突然変異

古典的な分離比分析において、健常×健常の交配において突然変異は弧発例の割合xの形で表れる。表現模写などの原因で現れる弧発例を無視することができるなら、常染色体性や伴性の突然変異率が推定できる。伴性の場合、精子と卵子での突然変異率の性差があり得ることを考慮した別のパラメータが必要となる。これについては罹患男子の選択係数mを用いる。親子間の継承行列transmission matrixが常染色体についてはx、性染色体についてはxmの関数として考案されている(Morton & Yasuda 1980)

例題5.7.1. ドシャンヌ型筋ジストロフィー遺伝子(DMD)の突然変異率には性差がない(Yasuda & Kondo 1980)。 卵子と精子それぞれでの突然変異率をuvとする。伴性形質の発生率に相当する男子の新しい突然変異による孤発例の割合x 

                 x=mu/(u+v)、あるいは v/u=(m/x)-2 

で表せる。mは選択係数で、DMDの場合は多くが10歳台で死亡するから次の世代に伝はることなく消失するのでm=1である。{ちなみに血友病では二十世紀前半ごろまでは致死(m=1)であったが、血液製剤の普及で子どもを持つことができるようになった(mm0<1)}

突然変異率に性差がなければ(u=v)ならばx=m/3で、DMDの場合の男子における発生率I 

                      I=u/x 

と表せるから、卵子の突然変異率uu=Ixから求めることができる。男子の突然変異率vは上の2つの式から v=(m-2x)I、女子のDMD遺伝子頻度は(1-x)Iとそれぞれ計算できる。

日本各地のDMDの専門病院から514名の男子発端者について家系調査を行なった。それらの家系資料について分離比分析の結果π=0.686p=0.460x=0.201が得られた。帰無仮説H0:x=1/3=0.333に対してxxに統計的有意差はなく、したがって帰無仮説は棄却できない。すなわち突然変異率に性差はない(u=v)という仮説は棄却できなかった (Yasuda N & Kondo 1980)

 

5.8. ポインター

 従来の分離比分析は両親とその実子という核家族に適用される。では核家族を含む家系Extended familyについてのデータが得られているとき、どうするか。一つの解決法は家系を核家族に分割してそれらについて分離比分析を行う。

 家系を核家族に分割すると、家系の情報の一部が失われる。確認について妥当と思われる仮定をして、核家族以外の血縁者により確認された核家族を分析する拡張型分離比分析法が開発されている(Lalouel & Morton, 1981)。ポインターpointerは核家族を選抜する核家族の血縁者(0,1質であれば罹患者、定量的形質であればあるしきい値より大きな値の者)である。ポインターは従来の発端者あるいは第2症例である。家族歴を調べていない親あるいは子どもから選抜した家族についてはポインターを割り当てることはしない。それは少なくとも1名のポインターが必要であるが確認を保証するのとしては十分でない。

 核家族の構成員、父親、母親と子どもたちでそれぞれ1名のポインターが考えられる。ポインターは最も近い血縁者を選ぶが2名以いるときは、各家族の最も近い血縁者だけを割り当てる。ポインターに必要な情報は、その表現型と家族員との血縁関係である。したがって核家族とその3名までのポインターが家系分析の単位になり得る。

 計算をし易くするために、若干の仮定が必要である。ポインターから親までの血縁のステップの表現型はわからないと処理する。また他の罹患血縁者は無視する。そうすると、家族員に最も血縁の高い遺伝子型を条件としてポインターの主座位遺伝子型の確率が突然変異を考慮した継承行列で与えられる(Morton & Yasuda 1980)。子どもたちの表現型の尤度は通常親とポインターの表現型を条件にして求める。

 この方法の長所は明らかである。突然変異を考慮した混合モデルでの尤度計算が可能となるが確認の偏りの許容度は厳しい。3つの短所に配慮しなければならない。

(1) 一般の家系を分割することにより情報の一部が喪失するに違いないが、不完全確認の一般家系の分析はこれまでない。混合モデルの反復計算は家系構造が小さい場合に限られ、より簡単なモデルでの計算はポリジーンあるいは文化伝達にたいしての主座位の効果を見極めるのには不適切である。

(2) ある個体は条件確率に子どもとして表れて、別の同胞の1員の事前確率の親あるいはポインターとしても入ってくるかもしれない。これは偏りを生じないが、核家族間に若干の依存性が生じる。分離比分析にはこの影響は見られないので、おそらく無視することができよう。これは家系を無作為にプールして、それぞれの分離比パラメータの異質性を検定して確かめる。ポインターの考えが確かなら、この検定では有意水準は第一種の誤り(言い過ぎる誤り)を超えることはない。

(3) 症状に関わりなく家系を無作為に抽出したなら、両親の表現型から親の表現型についての条件尤度で得られない情報が得られる。条件尤度の代わりに同時尤度を随意に計算することができるが、無作為抽出の仮定での同時尤度は根拠がなく、不完全確認の下では重大な誤った結果を導くし、また分布の仮定に敏感である。

 家系計算は一つの家系については実行可能である。したがって分離比分析の結果を用いる遺伝相談において家系を分割する根拠はない。核家族への分割から特異的な再帰リスクが得られるし、いくつもの有用な適合度検定が行なえる。罹患親の数が012の交配型の間の異質性は1つ以上の主座位を示唆するし、また主座位数の推定も可能である。確認方法やポインターの配置の異質性は確認が正しく理解されていなかったか、単純化した仮定に誤りがあったかを示唆する。逆に、これらの検定で適合がよければ、ポインターなしの分離比分析の結論についての確信が高まる。

 

5.9. 一般の家系

ポインター以上にさらに分離比分析を拡張するには難しい点が2つある。その第一は混合モデルでの計算が大量になることである。第二に、確認方法が分からない、あるいは複雑であるこれらの問題はいくつかのやり方が述べられて来たのだが、あまり成功していない。

尤度を何度も反復するため数値積分の計算をすることになるが、耐え難いほどの時間を要するようになる。数値積分には少ない分割で適切な結果が得られるガウス・エルミート求積法Gauss-Hermite quadrature(e.g. Stroud & Secrest 1966)をお勧めする。分割数を変えることで、尤度の変化を調べ、安定した値の尤度が得られる最小分割数を決める。そのほか家系の可能な遺伝子型をいくつか選び、尤度の安定度を調べる。選んだ遺伝子型の数が多くなると計算は耐え難いほどになり、特にまれな遺伝子があると、その計算結果に信頼がおけなくなる。

 そのほか混合モデルを諦めることである。エルストン・スチアート(Elston & Stewart 1971)は主座位あるいはポリジーンについてのメンデル期待比01/21での伝達頻度を取り上げた。これらの期待値からの有意な差があれば、推定することはできないが文化伝達が考えられると論じた。しかし確認、発症年齢、表現型分布、その他のモデルからのずれはみかけの伝達頻度として表れるであろう。文化伝達とこれらの如何なる攪乱も主座位/ポリジーンと共存して、判別することができない。混合モデルを諦めることは分離比分析の正当性を破棄することである。混合モデルによる分離比分析は連続変異を無視することなく主座位についての検定ができるのである。

 家系計算は、近親婚があるとメンデル性モデルでも困難である。この問題は核家族では最小に抑えられる。隔離集団では面倒であるが、近親婚がまれな地域ではあまり大きな実際上の問題はない。

 計算量の問題は家系の確認の偏りに比べてそれほど重大ではない。一番簡単な場合は内容が独立となる家系の単独確認である。第二の条件は、既に選んだ表現型に基づいて無作為か逐次的に家系は拡張していく。決して家族歴で選んではならない。罹患による生存力に違いがない、標本の拡大を一度決めたら、その内容に拘わらずそのデータは分析する。このような厳しい仮定の下で、π→0のとき家系の確率は 

              P(家系|確認)=P(家系)/P(罹患発端者

となる。この結果はカンニングス他(Cannings e al. 1979)によるもので、π>0あるいはこの仮定以外の場合については示していない。遺伝疫学のいかに慎重な調査でもかなり高い確認の確率で調査が行なわれるのが普通である。家系が不完全選択での問題は未解決である。したがって、ポインターを伴う核家族は方法としては現実的な選択である。

 

5.10. 参考文献

Cannings C, Thompson EA, Skolnick M 1979. Extension of Pedigree Analysis to Include Assortative Mating and Linear Models. In: The Genetic Analysis of Common Diseases: Application to Preventive Factors in Coronary Hart Disease. Eds Sing CF & Skolnick M. Alan R. Riss, New York.

Elston RC & Stewart J. 1971. A general Model for the Genetic Analysis of Pedigree Data. Hum Hered 21: 523-542.

Furusho T & Yasuda N 1973. Genetic Studies on Inbreeding in Some Japanese Populations. ]V. A Genetic Studies of Congenital Deafness. Jpn J Human Genet 18: 47-65.

Lalouel M & Morton NE. 1981. Complex Segregation Analysis with Pointer. 31:312-321.

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Morton NE. 1959. Genetic Test Under Incomplete Ascertainment Am J Hum Genet 11:1-16.

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Morton NE, Mi MP & Yasuda N 1966. Bivalent alleles. Amer J Human Genet 18: 233-242.

Morton NE 1969.  Segregation analysis. In Computer Application in Genetics. Ed NE Morton. Univ of Hawaii Press, Honolulu.

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Morton NE & Yasuda N. 1980. Transition Matrices with Mutation. Am J Hum Genet 32: 202-211.

Stroud AH & Secrest D 1966. Gaussian Quadrature Formulas. Prentice Hall, Englewood Cliffs.

Yasuda N. 1966. The Population Structure on Northeastern Brazil. Ph. D. Thesis. The University of Hawaii.

Yasuda N & Kondo K 1980. No Sex Difference in Mutation Rates of Duchenne Muscular Dystrophy. J Med Genet 17: 106-111.