「Bウイルスの予防と治療法のガイドライン」の改訂版概要

「Bウイルスの予防と治療法のガイドライン」の改訂版が出ていますのでお知らせします。
このガイドラインの日本語訳を京大霊長類研究所の中村伸先生が作成中です。

文献紹介

「Recommendations for Prevention of and Therapy for Exposure to B Virus (Cercopithecine Herpesvirus 1)」

Jeffrey I. Cohen1, David S. Davenport2, John A. Stewart3, Scott Deitchman3,

Julia K. Hilliard4, Louisa E. Chapman3 and the B virus Working Group

1Medical Virology Section, Laboratory of Clinical Investigation, NIH, 2Division of Infectious Diseases, Michigan State University Kalamazoo Center for Medical Studies, 3CDC, 4Viral Immunology Center, Georgia State University

Clinical Infectious Diseases 2002; 35: 1191-203

1987~89年のBウイルス集団感染と1991年のBウイルス感染死亡事故を受け、CDCとEmory University が組織したBウイルスworking groupは1995年に、「Guideline for the Prevention and Treatment of B-Virus Infection in Exposed Persons」(CID 1995;20: 421-439)を発表しました。このガイドラインについては、筑波霊長類センターの長 文昭先生がオベリスク増刊号(1997年10月)に日本語訳を報告しています。

今回の報告は、1997年にアトランタのヤーキス霊長類センターで、アカゲザルの排泄物らしいものが目に入って起きたBウイルス感染死亡事故を受けて、同グループが1995年のガイドラインを改訂したものです。

本報告については、京大霊長類研究所の中村伸先生が日本語訳を作成中です。

 

(概 要)

ヤーキス霊長類センターにけるBウイルス感染死亡事故は、従来報告された咬傷や針刺し事故に原因するものではなく、一般飼育管理などBウイルス感染の危険性が低いと思われていた単純作業時に起きました。そのため、マカカ属サルに係わる作業の際には、横あるは上からの飛散物も防げる防護眼鏡の使用を推奨しています。

予防治療のための抗ヘルペス剤として、従来からのアシクロビルに代えて、経口投与で吸収のよい、アシクロビルの6-バリンエステル化物であるバラシクロビル(Valacyclovir)を推奨しています。BウイルスはHSV-1に比べて抗ヘルペス剤に対する感受性が8倍~14倍低いため、抗ウイルス剤の血中濃度を高く保つ必要があり、バラシクロビル使用により投与量を減らし、また投与間隔を長くすることが可能です。

1995年のガイドラインの指摘と同様ですが、Bウイルス感染防止には、咬傷等事故後直ちに傷部を15分以上洗うことが重要です。サル由来物が目や粘膜面へ接触した場合は、1リットルの生理食塩液バックを利用して洗浄するのが便利ですが、事前に洗浄の訓練をしておくことが大切です。

また、マカカ属サルを扱う時はそのサルがどの様な由来であれ、Bウイルスに感染していることを前提に作業をする必要があります。

 

文責 (社)予防衛生協会 藤本