(3/9/03)
バイオテロ防衛(バイオディフェンス)に関する米国研究社会の動き |
9月11日の同時多発テロ、それに引き続いて起きた炭疽菌事件はライフサイエンスに新しい問題を提起し、科学研究雑誌に発表される論文に書かれた新しい情報が悪用される可能性について、科学者自身への問いかけがなされてきています。とくに微生物学、感染症、公衆衛生、植物、農業システム領域の雑誌が病原体の悪用に関する問題に直面しています。 |
1.論説 |
2003年1月9日、米国科学アカデミーは科学研究の公開性と安全保障のバランスについて、雑誌編集者、科学者、安全保障専門家、政府職員などを集めてワークショップを開き、その翌日には雑誌編集者が主体となって別の会合を開き、次のようなステートメントを発表した。 ピアレビューのある科学雑誌に掲載される科学情報に関しては、編集者と著者に独自の責任が負わされている。すぐれた内容の論文を、再現性の確認が可能なように詳細にわたって掲載することによって、研究全体を守らなければならない。独立した検証が行われなければ、生物医学研究の進展も、強力なバイオディフェンス・システムの基礎となる知識も得られない。 我々は、バイオテロの観点から公表された情報の乱用に法的な関心が寄せられることを認識しているが、まったく同じ領域の研究が社会防衛にきわめて重要であることも認識している。我々は発表された論文が引き起こすかもしれない安全・保障の問題に責任をもって対応することになる。 時により編集者が、発表の危険性が科学的恩恵を上回ると結論することもある。このような場合、論文は書き直しが要求されたり、または拒否されることもある。科学情報はセミナー、講演会、ホームページなどでも伝えられる。雑誌および科学界は、研究者が研究結果を公衆の恩恵を最大にし乱用の危険性を最小限に抑えるのに重要な役割を担っている。 |
2.NIH所長、アントニー・ファウシ(Anthony Fauci)によるバイオディフェンス研究の重要性についてコメント |
米国政府は2003年度予算としてバイオテロ対策費に59億ドル(7000億円)をつぎ込むことになり、そのうちNIHには2002年予算の8倍の17億5000万ドル(2000億円)のバイオディフェンス研究予算が来ることになった。これだけの増額はNIHの歴史上かってないことであり、膨大な責任が課せられたことになる。 |