(2/9/08)
岩波書店(科学ライブラリー)から1月末に表記の本が出版されました。睡眠病の新薬開発を行っている東大医学部教授の北潔先生との共著によるものです。目次、はじめに、あとがきの抜粋を紹介させていただきます。
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目次 |
1. なぜいま睡眠病なのか 2. アフリカ大陸を不毛にするナガナ病 3. 睡眠病はなぜ起こるのか − 原因解明にいたる道のり 4. 原虫トリパノソーマの生物学 5. 遅れている睡眠病の診断法と治療薬 6. 新薬開発をめざして — 日本からの貢献
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はじめに |
アフリカに、眠り続けて最後は死亡する病気があることを漠然と知っている人は多いだろう。しかし、それがアフリカの人々の健康にとどまらず、アフリカの経済発展にまで大きな影響を与えていることを理解している人は、ほんの一握りに過ぎない。この病気は、一般には眠り病と呼ばれている。しかし、正式の名前は睡眠病なので、本書の中ではこちらを用いる。
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あとがき |
私の専門はウイルス学である。東京大学を定年退官してからは、危険なウイルス感染症やプリオン病といった社会的に注目されている話題について、いくつかの本を出版してきた。ところが、本書は私の守備範囲とはまったく異なる原虫・トリパノソーマ感染症に関するものである。このようなまったく専門外の本を執筆したきっかけは、私の古くからの知人・所源亮氏(アリジェン製薬株式会社社長)から、彼が支援している睡眠病治療薬アスコフラノン開発研究の話を聞かされたことだった。睡眠病は昔からアフリカで人と家畜に大きな被害を与えていたにもかかわらず、長年、国際社会から見捨てられてきた病気である。最近になってWHOなどの国際機関が睡眠病対策に力を入れはじめたが、その活動のなかでアスコフラノンに国際機関が大きな期待を寄せていることをはじめて知ったのである。この研究リーダーが、私が東大医科学研究所に在職していた際の同僚だった北潔教授であることも知らされた。
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