113.エボラワクチンの現状

2018年7月28日、コンゴの北キブ州で急性の出血熱の集団発生が見つかり、8月1日にエボラ病であることが、PCRで確認された。コンゴ保健省は、8月7日の時点で、36人が死亡したと発表している。この死亡率は50%を越えていて、過去最大とされている。

WHOは、実験段階のワクチンの接種をただちに始めると伝えられている。このワクチンは、本連載60回67回で紹介したニューリンク社とメルク社が開発したウシ水疱性口炎ウイルス(VSV)をベクターとしたエボラワクチンで、第3相臨床試験を完了した唯一のワクチンである。

このワクチンは、1回接種で済み、迅速に免疫が成立するため、発生が急速に広がっている際に役立つと期待されている。免疫はおそらくワクチンが自然免疫を活性化するためと推測されているが、どれくらい持続するかはまだ分かっていない。おそらく追加免疫が必要と考えられている。

第3相試験の成績の一部は、本連載67回で紹介したが、ギニアとシエラレオネでリングワクチン接種(包囲ワクチン接種)により5837名に接種された。ランダムに2グループに分けて、すぐにワクチン接種が行われたグループでは、感染者は皆無だった。対象として21日遅れてワクチン接種を受けたグループでは、23名が感染した。100%の防御率になる。

2016年にGAVIアライアンス(ビル&メリンダ・ゲイツ財団により設立)が購入したワクチン30万ドーズが保管されている。使用にあたっては、WHOが支援して作製された臨床プロトコールにしたがうことになっている。

このワクチンのほかに、いろいろなデザインでエボラワクチンが開発され、臨床試験が行われている。それらの現状を表1に簡単にまとめて示す。

この中で、中国とロシアで承認されたワクチンは、コンゴでは用いられていない。

文献

Sheridan, C.: Merck vaccine heads Ebola countermeasures. Nature Biotec., 36, 563-565, 2018.