人獣共通感染症連続講座 第80回 ヘンドラウイルスとニパウイルス(日生研たより)

私の所属する日生研の機関誌、日生研たより45巻3号にヘンドラウイルスとニパウイルスについて、現在までに明らかになった疫学およびウイルス性状を中心にまとめました。 やや専門的な内容になっていますが、全体像は一般の方にも理解していただけると思いますので、転載します。 なお、図表は転載が難しいので割愛しました。 ご了承ください。

オーストラリアで1994年に突如馬と人に致死的感染を起こしたウマモービリウイルス(ヘンドラウイルス)は、まさにエマージングウイルスの典型的なものであった。 しかし、この発生でので獣医行政と研究チームの対応は迅速で、原因ウイルスの解明が短期間に行われ社会や経済への影響も未然に防ぐことができた 1)。

1999年3月中旬に今度はマレーシアで突如、豚と人に致死的な脳炎が起こり、原因ウイルスがヘンドラウイルスに非常に近縁の新しいウイルスということが分かった。 大流行になってから原因ウイルスが解明されたこともあって、100名以上の死者と90万頭以上の豚の殺処分という大きな被害をもたらしたが、現在は終息に向かいつつある。

これら2つのウイルス感染の状況を疫学的およびウイルス性状の面からまとめてみることにしたい。

1. ヘンドラウイルス感染

1) 最初の発生例
1994年9月にオーストラリアBrisbaneの郊外のHendraにあるサラブレッド競馬馬の厩舎で新しいウイルスが突如出現した。 全部で14頭の馬が死亡し、人が2名発病しそのうち1名が死亡した。その経緯は図1に示したとおりである 1)。 Cannon Hillの飼育場からヘンドラ厩舎に運ばれてきた2頭の馬のうちの1頭が2日後の9月7日に死亡したのが最初である。 2週間前後の間にさらに12頭が死亡した。9月14日には厩務員が発病し、良く15日には調教師が発病した。 厩務員は回復したが調教師は死亡した。 このほかにCannon Hillの飼育場で9月11日頃に1頭が死亡し、疫学的所見からこの馬も死亡例に組み込まれた。 また7頭が発病して回復した。 その結果、21頭の発病で14頭が死亡(致死率67%)、人は2名が発病し1名が死亡したことになる。 主な症状は馬と人のいずれも出血性肺炎であった 2)

Australian Animal Health Laboratory (Geelong)で死亡した2頭の馬の肺からウイルス分離を試みた結果、ミドリザル腎臓由来のVero細胞、アカゲザル腎臓由来のLLC-MK2細胞、人腎臓由来のMRC5細胞などで細胞変性効果が見いだされウイルスが分離された。 このうち、Vero細胞でもっとも早く細胞変性効果がみられた。 このウイルスを馬に実験感染させた結果、病因であることが確認された。 また、死亡した調教師の腎臓からも同じウイルスが分離された。 その結果、馬と人が同じウイルスにより死亡したことが明らかになった。

分離ウイルスはVero細胞でモービリウイルス属に特徴的なシンシチウム形成を起こし電子顕微鏡ではパラミクソウイルス科のウイルスの特徴を示した。 PCRによる試験では、パラミクソウイルス科のパラミクソウイルス属とニューモウイルス属のプライマーでは反応せず、モービリウイルス属のプライマーではM, F, L遺伝子のうち、M遺伝子特異的プライマーでのみ増幅された。 血清学的にはモービリウイルス属の牛疫ウイルスとのみ蛍光抗体法とイムノブロットで弱い反応がみられた。

これらの成績から分離ウイルスはモービリウイルス属の1員とみなされ、ウマモービリウイルスと命名された 3)。 しかし、後述するように現在ではモービリウイルス属とは考えにくいことから、ヘンドラウイルスの名称に変えられている。

2) 第2の発生例
1995年9月にQueensland州の北のMackayのサトウキビ栽培の農夫がBrisbaneの病院に入院し、2週間後の9月に急性進行性脳炎で死亡した。 血清中にはヘンドラウイルス中和抗体が入院6日目で16倍、17日目には4,096倍に上昇しており、IgM抗体も陽性であった。 髄液と脳ではPCRによりヘンドラウイルスM遺伝子が検出された。 解剖の結果、髄膜脳炎と診断され、脳、肝臓、脾臓、肺には多核巨細胞の存在、蛍光抗体法ではヘンドラウイルス抗原が検出された。 電子顕微鏡でヌクレオカプシドの凝集も見いだされた。 しかしウイルスは分離できず、SSPEウイルスのような細胞結合性の欠損ウイルスになっているのではないかと疑われた 4)

この患者は獣医師である彼の妻の牧場で1994年8月1日と8月12日に死亡した2頭の馬の解剖を手伝っていた。 この際に手袋、マスク、保護めがねなどは用いていなかった。 この後、患者はのどの痛み、頭痛、眠気、吐き気、頚のこりなどの症状が12日間続き、髄膜炎という仮の診断が下されていた。 この際の血清を調べてみると4倍のヘンドラウイルス中和抗体が検出された。 価は低いが、これらの馬から感染の機会があった200人で調べた結果では2倍以上の抗体価の人はひとりもいなかったことから、この患者はヘンドラウイルス感染で髄膜炎にかかって回復したものと判断された。

感染源となった2頭の馬は、1頭は急性の呼吸困難、もう1頭は突発性の神経症状で死亡したもので、アボカド中毒、および毒蛇に咬まれたためと診断されていた。 しかし、患者の死因がヘンドラウイルス感染によることが示唆されたため、ホルマリン固定の組織についてヘンドラウイルス抗原とウイルス遺伝子の検出が試みられた 5)。 1頭では肝臓、脾臓、唾液腺、骨格筋、腎臓が保存されていた。 しかし肺はなかった。 最初の発生例で回復した人の血清を用いた間接蛍光抗体法でヘンドラウイルス抗原が腎臓と骨格筋で見いだされた。 ほかの組織でも陽性の結果が得られたが自己蛍光があったため判定はできなかった。 ヘンドラウイルスM遺伝子特異的プライマーを用いたPCRではすべての組織でヘンドラウイルス核酸の存在が確認された。 もう1頭では肺、腎臓、肝臓が調べられ、肺でヘンドラウイルス抗原が検出された。 またPCRでもすべての組織でヘンドラウイルス核酸が見いだされた。

3) 疫学的所見
抗体調査はウイルス中和試験で行われてきている。 1994年のヘンドラでの発生では合計1,976頭が調べられた。 そのうち、抗体陽性の馬は9月7~9日にヘンドラ厩舎にいた馬だけで、ほかはすべて陰性であった 6)

1995年のMackayでの農夫の死亡例の後、10月末から11月末にかけて馬をはじめ野生動物を含めて全部で3,216の血清が集められ、そのうち検査に適していなかった21サンプルを除いてすべて陰性であった。 陰性であったのは猫(64)、牛(276)、ニワトリ(11)、犬(23)、ロバ(1)、山羊(6)、アヒル(2)、馬(2,755)、豚(5)、ラット(2)、カメ(1)、シチメンチョウ(8)、その他野生動物(41)である 7)

2つの調査で合計4,731頭の馬が陰性であった(注:ヘンドラ厩舎にいて陽性であった馬の数まで陰性に数えられているとみなせる)。

後述するように猫は実験感染で感受性であったため、ウイルスの増幅動物としての可能性が考えられたのだが、2回の調査で検査した合計564頭すべてが陰性であった。

4) 自然宿主の解明
前述の2回の疫学調査を中心に、哺乳類、爬虫類、両生類、鳥類を含む46種類の動物から総計5,550の血清が検査されたがすべて陰性であった。 2回の発生がHendraとMackayという800km離れた2つの地域で1カ月の間に起きていた事実を考えて、両地域間を移動しうるか、または両地域に生息する野生動物が宿主ではないかという仮説が立てられた。

両地域に生息する既知の哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類のリストのうち、もっとも可能性が高い候補動物としてオオコウモリと渡り鳥が浮かんできた。 パラミクソウイルスの伝播は鳥から哺乳類へは普通は起こらないので、オオコウモリが重点的に調べられた。

その結果、4種類のオオコウモリすべてにヘンドラウイルス抗体が検出された。 陽性率はクロオオコウモリ(Pteropus alecto)が18%、メガネオオコウモリ(P. conspicillatus)が24%、ハイガシラオオコウモリ(P. poliocephalus)が9%、オーストラリアオオコウモリ(P. scapulatus)が5%であった。 その後の調査で図2に示すようにウイルス抗体陽性のオオコウモリは中北部オーストラリアのDarwinから南部オーストラリアのMelbourneにかけて広く存在していることが明らかになっている 8)

ウイルスは双生児の胎児を流産したハイガシラオオコウモリの子宮液から分離された。 このウイルスはヘンドラウイルスとは区別できず、PCRで増幅した200塩基対のM遺伝子の配列は馬由来のヘンドラウイルスとまったく同じであった。

ハイガシラオオコウモリ8羽に皮下、または経鼻と経口で接種をした結果、6羽が無症状で抗体が上昇し、2羽では血管病変と高いレベルの抗体が見いだされた 9)

これらの成績からオオコウモリが自然宿主であると結論された。

5) ヘンドラウイルスの分子性状
本ウイルスは人、サル、豚、山羊、牛、ハムスター、犬の細胞でよく増殖する。 細胞変性効果はVero細胞とヒト由来143細胞でもっとも顕著であって多核融合細胞を形成する。 ウイルス粒子にはニューラミニダーゼ活性はみられない。

ゲノムは13.5kbがクローニングされ配列解析の結果、ほかのパラミクソウイルス同様に3′-N-P(V,C)-M-F-G-L-5’の配列であることが明らかになっている。 モービリウイルス属のウイルスとヘンドラウイルスの蛋白の相同性を比較すると、N蛋白は33%、P蛋白は17~21%、V蛋白は43~39%、M蛋白は40~42%、F蛋白は33~35%と低く、パラミクソウイルス科のほかの属との相同性はさらに低い 10) 11)

とくにほかのパラミクソウイルス科のウイルスと異なる特徴は、蛋白翻訳領域の間の非翻訳領域が非常に長いことである。 まだL遺伝子の解析が終わっていないが、L遺伝子がほかのパラミクソウイルスと同様と仮定すると、ヘンドラウイルスのゲノムは18,000ヌクレオチドとなる。 ほかのパラミクソウイルスではほぼ均一でたとえばRSウイルスは15,222ヌクレオチド、麻疹ウイルスは15,894ヌクレオチドであり、ヘンドラウイルスは特別に大きなゲノムをもつことになる。

これらの性状から、当初モービリウイルス属とみなされて付けられたウマモービリウイルスの名称がヘンドラウイルスに変更されたわけである。 パラミクソウイルス科の新しい属とみなすべきで、オーストラリアのグループは大型ゲノムの特徴からメガミクソウイルス属の名前を提唱している 9)。 しかし、1999年版のウイルス国際命名委員会報告では、まだ決まっていない 11)

6) 病原性
ウマでは自然感染と実験感染いずれでも、血管系の病変を中心とした全身性の感染であった、とくに肺の血管が冒されて致死的な間質性肺炎を起こし肺水腫で死亡している 13)。 猫では4匹に皮下、2匹に経鼻でウイルスが接種され5~9日で発病し、病変はウマの場合と同様に致死的な肺炎が起きている。 猫の間での同居感染も起きた 14)

猫はこのウイルス感染の良いモデルと考えられたが、保定が困難なためにモルモットへの感染実験も試みられた。 その結果、ウイルスを接種された4匹中1匹が無症状感染になったほかは、すべて死亡した。 全身性の血管病変という点ではウマや猫と同様であるが肺水腫はほとんど起きていない点が異なる 15)

ウマでの実験感染ではウイルス価は腎臓が最高で、肺と尿がそれに続いて高い。 直腸からは分離されていないので、糞への排出はないものと考えられている。 自然感染はおそらく尿で汚染したものを介した経口感染によると推測されている 9)

接種21日後に回復したウマで高い抗体があるにもかかわらず脾臓でウイルスが検出されており、一定期間の持続感染も疑われている。

肺以外に中枢神経系も冒される。 髄膜脳炎で死亡したヒトの例ではウイルスによるニューロンの破壊が見られている。

2. ニパウイルス感染

1) 経緯
1998年9月にPerak 州Ipoh市の近くで脳炎患者が発生し、翌年2月初めまで続いて15名が死亡した。 主として成人男性で、いずれも豚との接触歴があった。 マレーシア保健省とWHO日本脳炎協力センターである長崎大学熱帯病研究所の調査で日本脳炎感染によるものと診断され、豚舎への殺虫剤の散布や多数の人への不活化日本脳炎ワクチンの接種が行われた。

第2の集団発生は1998年12月から99年1月にかけてNegri Sembilan州のSikamat市の近くで起きた。 第3の最大の発生は同じNegri Sembilan州のBukit Pelandak市で1998年12月に起きた。 そのほか2例がSelangor州で起きた。 発生地域および死亡者の発生状況は図3および3にそれぞれ示した 16)~18)

当初、日本脳炎感染とみなされたが、疫学的所見は日本脳炎以外のウイルス感染を疑わせるものであった。 すなわち、日本脳炎は主に子供に発生するのに今回は成人が発病していること、豚と密接な接触のある人でのみ発病していること、日本脳炎ウイルスは蚊で媒介されるのに、同じ家でも豚との接触のない人では発病がみられないこと、日本脳炎ワクチンの接種を受けた人でも発病していること、などである。

3月1日にマラヤ大学で患者の血清と髄液についてウイルス分離が試みられ、接種5日目にシンシチウム形成が認められ、ウイルスが分離された。 電子顕微鏡では16~300nmの多形性の粒子が見いだされた。 このウイルスは血清学的に日本脳炎ウイルスをはじめ試験した数種のウイルスとは異なることが明らかになり、マレーシアの研究者がサンプルをCDCに持参し、そこで調べた結果、ヘンドラウイルス抗体と反応すること、ついでヘンドラウイルスのP遺伝子と80%の相同性のあることが見いだされ、ヘンドラ様ウイルスによる感染であることが明らかになった。 この分離ウイルスは分離材料が採取されたKuala Lumpur新空港近くのSungai Nipah村の名前をとってニパウイルスと命名された。

ヘンドラウイルス抗原を用いたELISAでは、日本脳炎抗体陰性の12名の患者血清にヘンドラウイルスに対するIgM抗体が検出された。 死亡した患者の脳、肺、腎臓についてヘンドラウイルスに対する高度免疫血清を用いて行った免疫組織染色では、ヘンドラウイルス様の抗原が検出され、ヘンドラウイルスに類似の核酸の配列も見いだされた。 さらに、発生が起きた養豚場の豚の中枢神経系、肺、腎臓でヘンドラウイルス様の抗原が免疫組織染色で検出された。

これらの結果、人と豚に発生した脳炎はヘンドラウイルスに類似のニパウイルス感染によることが明らかになった。 しかし、マレーシア公衆衛生当局は日本脳炎との重感染という発表を続けており、海外のウイルス専門家から強い批判がなされている 16)

4月23日までに入院患者数は267名、そのうち105名が死亡した。 その時点までで豚は90万1,228頭が殺処分された。 最大の流行時には毎日7人の新しい患者が入院していたのに対して、4月30日の時点では過去8日間に新しい患者の発生は見られておらず、5月初めにWHOは流行が実質的に終息したと発表した。

しかし、これは人での流行のことであり、豚ではJohor州、さらにKelantan州でもあらたに抗体陽性豚が見いだされ、5月中旬現在までに4つの州に広がった。

このほかに、シンガポールでは11名の患者が発生し、ニパウイルス抗体が検出された。 これらの患者はマレーシアから輸入した豚を取り扱った人たちであり、シンガポールの別の屠畜場にマレーシアから輸入した豚の血液にもニパウイルス抗体が検出されている。 3月中旬にマレーシアからの豚の輸入が中止され、屠畜場が閉鎖されたのち、シンガポールでは新しい患者は出ていない。

2) ニパウイルス感染の特徴
CDCでの試験でニパウイルスのゲノムはヘンドラウイルスと同様の構造で、ヌクレオチド配列はヘンドラウイルスと全体として約20%異なっている。 人、豚、犬からの分離ウイルスについてN, P, M遺伝子の部分配列はすべて一致している。 これらの結果からニパウイルスはヘンドラウイルスとは異なるものと考えられている。 しかし、ヘンドラウイルス抗体と反応することから近縁関係のものとみなされている。

人は4~18日の潜伏期で発病する。 主な症状は3~14日間にわたる高熱と頭痛、ついで眠気、方向感覚の喪失が起こり、重症例では3~30日後に昏睡におちいり死亡する。 呼吸器症状はわずかの例でみられている。 致死率は40%で、抗体のみ陽性の無症状感染も起きている。

人から人への伝播はこれまでのところ見いだされていない。 患者の看護や治療にあたった看護婦や医師、解剖を行った病理研究者では発病した人はなく、またウイルス抗体も陰性であった。 人への伝播の危険性を調べるために、さらに患者の家族、養豚場の従業員、屠畜場従業員、豚の殺処分にかかわった兵士、獣医師などについての調査が進行中である。

離乳豚では呼吸困難、あらあらしい咳、開口呼吸などが主な症状で、時に間代性けいれん、筋肉れん縮、後肢の衰弱などの神経症状を伴う。

成豚では40Cに達する急性の発熱、開口呼吸、唾液分泌過多、鼻汁(時に血液を含む)の症状が起こり、雌豚では流産の可能性もある。 頭を押しつけたり、柵を咬んだり、間代性けいれんのような神経症状も呈する。 死亡時には鼻から血液の混じった鼻汁を分泌することもある。

豚での致死率はあまり高くなく、通常は2~3%、時に5%程度である。 しかし、感染率は高く、95%の豚が抗体陽性の養豚場も見いだされている。

豚以外の動物への感染の可能性についての研究は進行中である。 汚染地域の野犬では50%にニパウイルス抗体が検出された。 1頭の野犬の解剖例では肺、腎臓、脾臓、心臓の組織で免疫組織染色によりウイルス抗原が検出された。 この犬の腎臓と肝臓の組織からウイルスが分離され、RT-PCRで増幅した産物のヌクレオチド配列によりニパウイルスと同定された。 犬での症状は眼からの分泌を伴うジステンパー様のもので、主な病変は腎臓、肺、気管に見られている。

猫ではこれまでに23匹が調べられ1匹が抗体陽性であった。

汚染養豚場近くのIpohの競馬場では47頭の馬のうち、2頭がニパウイルス抗体陽性であった。 これらの馬は外見上、健康であったが殺処分された。 そのほかに調べた1,400頭の競馬馬は抗体陰性であった。

クアラルンプール空港周辺には多数のネズミが生息しており、もしもこれらがニパウイルスに感染していると航空貨物などにまぎれこんで諸外国にもニパウイルスが広がるおそれが考えられたが、幸い、これまでのところこれらの地域で捕獲した300匹のネズミではニパウイルスは見つかっていない。 種々の鳥類(アヒル、ニワトリ、鳩)のサンプルも採取されたが、まだ試験は行われていない。

ウイルスの宿主として疑われている果食のオオコウモリと食虫コウモリについての試験はGeelongにあるAustralian Animal Health Laboratoryで試験が行われており、99匹中15匹のオオコウモリからニパウイルス抗体が見いだされている。

文献

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