TPC 吉田高志
今回からのプライメートフォーラムの講師をお願いした後藤信男先生の紹介をいたします。
サル類の生殖内分泌の研究をするように、 という事でTPCに赴任した私は、浮世の義理で、 血液・血清生化学値を測定するための自動分析装置の精度管理とそのメンテナンスを担当することになりました。 そして、カニクイザルのそれら測定値を参考値というカタチで、 1981年の第1回TPCシンポジウムで発表するはめになってしまった訳です。 その発表の折、 会場フロアーから「それらは相互に関連のあるデータですから、 多変量解析法を適用すべきです」とのサゼスチョンをいただいたのが、 後藤先生との初めての出会いでした。 当時、多変量解析法のタの字も知らなかった私は、 適当にその場を誤魔化した事を、今でも、 昨日の事のように赤面するおもいで覚えています。 そして、当時の本庄センター長の命令で、 農水省家畜衛生試験場(家衛試)を訪れる事になりました。 ちょうど、カニクイザルをはじめとし、ミドリザル、 リスザルの時系列データが大量に蓄積され始めた時期です。 一介のホルモン屋には、これらのデータに適切に対応することは無理です。 しかし、これらのデータとともに後藤先生のもとに日参し、 当時は愛煙家であった後藤先生が、 農水省の大型コンピュータの端末の前でモクモクと紫煙をあげながらイライラと計算してくださった成果が「サル類の成長過程の解析」として、 雑誌「成長」あるいは「実験動物」を主舞台として、発表されました。
先生は、東北大学農学部家畜育種学教室を卒業され、 会津短期大学の助手・助教授・教授を経て、家衛試の実験動物研究室・室長として、 つくばに来られました。 そして、「成長」の研究では門外漢であった私は、御薫陶をいただいた訳です。 その後、神戸大学農学部教授として、一時、つくばを離れられましたが、 現在は、再びつくばに戻って来られ、我々、若輩者の御指導をいただいています。
会津短期大学の助手をなさっていた時に、 「成長」の研究では第一人者であった故清水三雄信州大学教授の門を叩かれ、 「成長」の研究を始められた、とうかがっています。 そして、 清水先生の門下の宮尾嶽雄愛知学院大学前教授らとともに1962年5月の雑誌「成長」創刊号の発行や、 「成長談話会」発足に参画されました。 雑誌「成長」はわが国における成長に関する最初の専門誌です。
先生の御造詣の深さは、フォーラムの講師として最適であり、 その暖い御人柄は、フォーラムの行間に溢れることと思います。 御多忙中、講師を御引き受けていただき有難く存じます。 皆様もフォーラムを御楽しみください。