皆さんはウルグァイ(正式にはウルグァイ東方共和国)という国名を聞いたことがあると思いますが、それは例のウルグァイラウンドという言葉からでしょう。 ガット閣僚会議はこの国の観光地であるプンタ・デル・エステという所で1986年に開かれたものです。
この国は二大国アルゼンチンとブラジルに挟まれた小さな国で日本からみれば丁度地球の裏側にあります。 面積は日本の約半分、人口は320万人位です。 そのうち半分近くの140万人が首都のモンテヴィデオに住んでいます。 ほとんどがスペイン系、イタリア系の白人です。
私は、1997年1月24日からJICAのウルグァイ国獣医研究所強化計画プロジェクト(リーダー・井上忠恕)の一員としてモンテヴィデオにきています。 本年7月21日迄滞在する予定です。 この国の歴史、政治などは他書にゆずり、ここでは毎日経験したこと、気がついたことを書こうと思います。 貴重なフォーラムに、実験動物とくに霊長類研究と関係ないことを書きますが御了承下されば幸いです。
モンテヴィデオ市はラ・プラタ河に面しています。 この河は海といってもよいほど大きく、対岸のアルゼンチンは全く見えません。 広い所で100kmをこえ、狭い所でも45kmの幅をもつ大河です。 この狭い所に橋を作る計画があり、日本からも三菱の関連事業体が見積りに参加しています。
私の住んでいるポシートスという街は市内でも高級な住宅地内にあります。 そこのとある小さなアパート・ホテル(スイーテスとも云い、DK、寝室、バスルームがついた50m^2位の部屋がある)に住んでいます。 ホテルは海辺を通っているラムブラという4〜6車線の道路に面していて部屋からは海がよくみえます。 ランブラ通りに沿って9〜12階建のマンション等の中層建築が約10kmにわたって林立していて一見ハワイのワイキキ通りのようです。 今は2月の初旬で季節は夏、海浜では沢山の人が泳いだり、肌を焼いたりしています。 浜の砂は豊富で、黄色〜茶色がかった細かいサラサラとしたきれいな砂です。 気温は最高でも30℃位で湿気が少なく、風が強いせいか体感温度としては涼しく感じます。 風の強い時は砂がかなり遠くまでとんできます。
ホテルからみると海の水はどういうわけか茶色と青色の水が帯のようになっています。 風の強い日はその帯がなくなって皆茶色になりますから、底が浅いために波が茶色の砂を巻き込むからでしょうか。 風が弱い日は波が静かなために砂をまきこまず青い本来の色をしています。 この河の上流には有名なイグアスの滝があり、私は行ったことがないのですが、テレビ、写真などによると茶色の水のようですからもともと茶色い水なのかもしれません。 あるいは、少し上流の対岸には人口1,000万人を超えるアルゼンチンの首都、ブエノスアイレスがありますから、それの排水のためとも思えます。 土地の人はここで泳いだりしていますが私はとても泳ぐ気がしません。 一寸しょっぱいとのことですから少しは大西洋の水が入り込んでいるようです。 しかし、潮の満ち引きによる水面の変動はなく、むしろ南からの風の影響が大きい感じです。
河(海)の上流に港があり、下町(cuida vieja、古い街)となっていて、最近はこの辺の治安はあまりよくありません。 この港からはブエノスアイレスへの定期船が運航されていて3〜4時間で着きます。 この河は大きい割には底が浅く、昔の難破船がかなり沈んでいるとのことです。 河の中流から下流にかけて東側(地図でいえば右側)にウルグアイがあります。 そして、河口、大西洋に面して有名なプンタ・デル・エステがあります。 スペイン語でpuntaは岬、esteは東の意味です。 モンテビデオからプンタ・デル・エステにかけての海岸(河岸)は、先程のきれいな砂からなる浜が点在していて避暑地になっており国内外からの多くの人々が来ます。 とくにアルゼンチンの人が多く、その中の金持ちは豪奢な別荘をもっています。 最近はブラジルからも沢山来ています。 10日程前からこの海辺に給油船が座礁し石油が流出して大騒ぎしています。 私がこちらに来る前に、ロシアの船が難破して大量に日本海に重油を流出させましたがどうなったでしょうか。 こちらでも殆ど人海戦術で対応しています。 今朝の新聞によれば5,000頭のアザラシが死ぬかもしれないとのことです。
奇妙なことに、対岸のアルゼンチン側は何故か泥ばかり滞積して泳ぐことができません。 地球の自転の関係で泥はアルゼンチン側へ、砂はウルグアイ側へとふるい分けられるのだとまことしやかな説もありますがこれは眉唾ものです。 川の流れ、地形、風の方向など、いろいろな要因が複雑に搦み合って生じた現象と私は思っています。
今、住んでいるポシートスという所は中心街セントロから東南へ数km、バスで約20分位の所にある住宅街です。 海辺沿いには9〜12階の中層ビルが建ち並び、その内陸側には、ビルと2〜3階建の古い家が混在しています。 中層ビルの多くは日本のマンション形式のものですが一戸当たりの面積は遥かに大きいものです。 ある日本人が住んでいる所はふかふかの絨毯が敷きつめてあり、中世風の豪勢な家具、調度品、壁にはどの部屋にも大きな油絵がかけてあります。 王侯貴族の住んでいるような所です。 今、モンテヴィデオでは建築ラッシュであちこちで工事中ですが、その基礎工事、鉄筋や柱の太さ、壁の厚さなど日本では考えられないほど華奢です。 一昨年、やはりJICAのプロジェクトで北京に行った時、建物や高架道路の柱の細いのに驚いたことがあります。 地震国と非地震国の違いでしょうか。 私のいるホテルも隣室のテレビの音などが聞こえます。
ウルグァイは山が殆どない平らに国ですが市内は結構坂道があります。 ポシートスでは海に向かっている道はなだらかな下り坂になっています。 どんな道でも両側にはアカシア、ハカランダ、ユーカリなど大木の並木がおい繁り緑豊かな所です。 古い建物も随所にあり、古きよきヨーロッパの雰囲気を残しています。 手回しのオルガン弾きがひょっこりあらわれそうな街角も沢山あります。 セントロや下町には二・三度しか行っていませんが、7月18日通りといわれるメインストリートを一寸はずれるとやはり立派な並木があります。 かつて、この国は畜産物を主とする食料を世界各国に輸出して栄華を誇っていました。 その頃の遺産があちこちに残っているのだと思います。 ポシートスの東方のカラスコという街は比較的新しい高級住宅地です。 松林の中にあって、海に近くその環境は素晴らしいものです。 敷地も広く建物も別荘を兼ねたようなセンスのあるものが多くみられます。 その近くにはヨットハーバーがあり、週末にセーリングを楽しんでいる人達をよく見かけます。 政府の統計などによると年間のGNPが1人当り3,800ドル(47万円)とか4,500ドル(55万)とかいわれています。 主要産業が農牧業とそれを基にした食品、羊毛、皮革製品の製造だけではGNPはそんなものでしょうが、現実にはポシートスやカラスコの近辺での生活を見ていると、よくこれだけでやっていけるなと思います。 一説によれば社会保障制度が発達していてあくせく働いて貯金する必要がないからかもしれません。 しかし、中南米諸国と同様に貧富の差が激しく、ごく一部の階層をみている可能性も十分あります。
申し遅れましたが、ポトーシスに限らず市内どこでも車の渋滞は全くありません。 道の多くは一方通行になっていて、片側3車線がもっとも広い道路なのに渋滞がないのはやはり車の数が少ないのでしょうか。 走っている車は最新式のものからバンパーもラジエーターカバーもないポンコツ車までピンからキリ迄あります。 別に趣味でしょうか、古いフォードがよたよたとピカピカに磨かれて誇らし気に走っているのも時々見かけます。 後で述べますように、ウルグァイは畜産物や一部の農産物を除けば殆んど輸入品でそれらには最高23%の税金が付加されています。 自動車に限っていえば100%の税金がかかり倍の価格になってしまいます。 カローラ(ジーゼル、160cc)が370万、BMW(2,800cc、ジーゼル)が650万円もします。 前にソリスという新しい別荘地に行ったことがありますが、そこの土地建物が500万円位ということですから如何に車が高いかが分かります。 市内で渋滞が起こらない筈です。