WHOでBSEに関する専門家会議が開かれ、勧告が出されました。 その記者会見のテレビを見ていたら、委員長のとなりに NIH のジョウ・ギブス Joe Gibbs, Jr. 博士の顔が見えました。 彼はガイドユセック Gajdusek がノーベル賞をもらった一連のサル接種実験を担当した人で、出身は獣医です。 私は20数年間、彼から毎年、彼の研究室の論文別刷り集を送っていただいております。 久しぶりに元気な顔を拝見して嬉しく思った次第です。 余談はこれ位にして、記者発表の全文を以下にご紹介します。 |
国際専門家による勧告:BSE拡大の防止と人への危険の可能性の減少のための対策 1996年4月3日 |
1996年4月2〜3日にWHOが開催した会議で、国際専門家はBSEに関連した公衆衛生問題と、1996年3月20日に英国政府が正式に報告したクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)の新型の出現について、検討した。 最新の科学的情報にもとづいて、専門家会議は動物間でのBSEの伝播を最小限に抑え、BSE病原体に人が暴露されるのをできるだけ完全に減少させるために、以下を勧告する。 |
専門家会議の所見 |
牛海綿状脳症 |
BSEは牛における伝達性海綿状脳症 transmissible spongiform encephalopathy (TSE) であり、1986年に英国で最初に発見された。 同様の変性疾患は種々の動物種で起きている。 BSEの牛への伝達は、羊と牛を原料とする濃厚飼料中の汚染肉と骨粉を介して起きたとみなされる。 英国は本病の高い発生が見られる唯一の国であり、流行は主として、1988年にとられた反芻動物(牛、羊、山羊)の餌の禁止措置以前に、汚染した牛の材料を牛に戻すリサイクルによるものとみなされる。 今日までBSEの母親から子への伝達、または水平伝達の証拠はない。 英国での本病の発生は有意に低下してきている。 しかし、これまでのところ流行を抑えるまでにはいたっていない。 BSEの全世界での分布ははっきりしないが、ほかのヨーロッパ諸国の牛で、はるかに低い頻度の発生が報告されている。 これらの国のBSEの一部は、おそらくBSEに汚染した餌の摂取に関連があるものと思われる。 |
新型CJD (Variant CJD) |
委員会は英国の10例の臨床および病理学的データを検討した。 本病は古典的CJDに普通に見られるものより若い年令に起きており、いくつかの臨床的、病理学的な違いを示している。 これら10人の所見にもとづいて、委員会は本症候群の頻度と分布を決定するのに必要な調査が、より正確かつ容易にできるように、新型についての定義を定めた。 委員会はBSEと新型CJD の間にはっきりした関連はないと結論した。 しかし状況証拠は、BSEへの暴露がもっとも可能性のある仮説かもしれないということを示唆している。 これらふたつの病気について、さらに研究が緊急に求められる。 BSEへの暴露は英国での一連の措置により、すでに非常に減少してきている。 本委員会の勧告の実施により、BSEへの暴露の危険性はさらに最小限のレベルにまで減少されるはずである。 |
勧告 |
牛海綿状脳症 |
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新型CJD |
全世界にわたってのBSEと新型CJDについての調査が増すにつれて、1〜2カ月中にはさらに情報が集まるであろう。 WHOはこれらの進展を絶えず調べながら、必要に応じて勧告を最新のものにもっていく予定である。 |