昨年5月の第77回の本講座でレベル4実験室の一般的特徴の解説と世界各国の現状をとりあげ、さらに第84回ではフランスのリヨンに建設された最新のレベル4実験室をした際のメモをご紹介しました。とくに第77回ではレベル4実験室の建築ラッシュを断片的にご紹介しましたが、その後、昨年11月にはASM News, Vol. 65, No. 11に掲載された「ホットラボの暑い時期」(Hot Times for Hot Labs)という報告で、世界におけるレベル4実験室の現状が紹介されています。これを参考にしてもう一度整理し直してみます。 |
1.名称 |
昔はP4実験室と呼ばれていました。Pは物理的封じ込めPhysical containmentの略です。しかし、その後、病原体pathogenのPとか、防御レベルprotection levelのPとも言われるようになり混乱が起きています。国際的に現在ではバイオセーフテイレベルBiosafety Level、略してBSLが広く用いられるようになりました。すなわちP4実験室はBSL-4実験室となります。さらに省略してBL-4実験室と呼ばれることもあります。本講座ではレベル4実験室としています。 なお、オーストラリアではPhysical containment 4の略PC4が採用されており、また米国NIHに新たに建築されたものはMCLと呼ばれています。これはMaximum containment laboratory の略で、昔CDCが用いていた名称です。 一方、よく知られているように、ベストセラー小説ホットゾーンや映画アウトブレイクがきっかけで、レベル4実験室は一般にホットゾーンとも呼ばれてます。 |
2.全世界に存在するレベル4実験室(アイウエオ順) |
このほか台湾にはグローブボックス型のものがあるといわれています。また、リビアと北朝鮮にはレベル4実験室に相当するものがあると推定されています。 一方、第84回でご紹介したようにフランスのレベル4実験室では2005年に火星探索機が持ち帰るサンプルの検査も検討していますが、NASAはテキサス、ヒューストンのジョンソン宇宙基地の近くに火星サンプル専用のレベル4実験室を計画しているようです。また、テキサス大学のレベル4実験室も火星サンプルの検査を検討中と言われています。 |
3.問題点 |
多くのレベル4実験室が存在または建設中ですが、その安全基準になると不明の点が多々あります。国際的な基準もありません。 日本のものは第77回講座でご説明したようにグローブボックスタイプのもので、上記のリストの中でも最高の安全性が確保されています。グローブボックスタイプの実験室は日本のほかにオーストラリアのVIDRL、ガボン、ドイツ、USAMRIIDの一部、ジョージア州立大学などの実験室です。 レベル4実験室で取り扱う病原体はエボラウイルス、マールブルグウイルス、ラッサウイルスなど、ほとんどは南半球の熱帯雨林由来のものです。これに対してレベル4実験室のほとんどは、これまで北半球にありました。このアンバランスの解消にオーストラリアが貢献しています。とくに最近のニパウイルス感染ではオーストラリアがCDCと一緒に大活躍しています。ニパウイルス感染を契機にアジア地域でのレベル4実験室の必要性が国際的に提唱されています。本来ならば日本もアジアの一員として協力すべきものと思いますが、現状では無理のようです。 |