予防衛生協会が運営する霊長類フォーラムで私が連続講座「人獣共通感染症」を始めたのは1995年4月でした。それから15年が経ちました。開始当時を振り返ってみると、当時、私が委員として参加していた日米医学研究協力事業・霊長類医科学の委員会でインターネットによる霊長類フォーラムの設置が委員のひとり吉川泰弘東大教授(当時、筑波医学実験用霊長類センター長)から提案され、人獣共通感染症についての記事の提供を依頼されたのが発端でした。まだ、インターネットのコマーシャル・プロバイダーは存在していない時代でした。インターネットによる講座がどのようなものかは、私はまったく理解していなかったのですが、近い将来非常に大きな広がりを示すようになるという吉川先生の意見を受け入れて、講座を引き受けることにしたのです。
ちょうど、その前の年にインターネットによるエマージング感染症に関する世界的情報ネットワークのプロメド(ProMED)が始まっており、その設立者のスティーブ・モース(Stephen Morse)をはじめ海外の多くの研究者との交流もあり、情報は頻繁に届いていたため、それらを中心に講座を始めたのです。まもなく、この講座は徳島大学医学部動物実験施設のホームページにも転載されて、大学関係者の間でかなり読まれるようになりました。
1996年には英国でBSEによる人の感染の疑いが発表され、世界的なBSEパニックが起こりました。それをきっかけに、この講座を日本獣医学会のホームページにも提供することにしました。そして、BSEに関する情報もできるだけ掲載してきました。2001年に日本で最初のBSE例が見つかってから、この講座へのアクセスは爆発的に増え、まさに最初に吉川先生が予言したとおりの広がりを示すようになったのです。
この15年間で掲載した講座は180回となりました。その多くは私にとって大事なデータベースとなり、いくつかの著書にも利用してきました。
現在はインターネットによる情報提供が多くのサイトで行われるようになり、この講座の役割はほぼ終えたと考えています。