ウルグァイの真中辺に細長い大きな人造湖が二つ東西約150kmにわたってあります。 その湖はネグロ河をせき止めて作ったもので大きな発電所があります。 もともとこの国には山が殆んどなく、最も高いものでも標高500m位でそれもラ・プラタ河の河口近くにあります。 内陸部は殆んど平坦ですからほんの少しの落差を利用して発電せざるを得ません。 それでも重工業が少ないせいか自国の消費電力を上回る電力を生産し一部をアルゼンチンに売っています。
市街を抜けて、モンテヴィデオという名前の由来となっているセロの丘を左手に見ながら国道5号線に入り内陸部に向って北上します。 ウ国の主要幹線はすべて2ないし4車線で完全に舗装されており、車は時速120km位で走っています。 どの道も両側に40〜50mの幅の草地がとってありますが、これはかって牛や羊が歩いて首都に移動したためです。 何しろ人口が320〜330万人なのに牛が950万頭、羊が2,500万頭もいる牧畜国です。 市街地から30分も車で走ると、後はなだらかに起伏する草原と所々にある森林が限りなく続き牛や羊が草を噛んでいます。 いわゆるパンパスです。 あまり牧野として改良されていないそうですが肥沃な土地もかなりあってそこでは良質な草が獲れます。 北海道でよく見かけるタワーサイロは全くみられず、地面に穴を掘って作ったバンカーサイロが酪農家でたまにみられます。 タワーサイロのかわりにビニールで乾草をラッピングした直径2m位のロールがあちらこちらでみられます。 牛の品種としては乳牛はホルスタイン、肉牛はヘレフォードが圧倒的に多く他にアパーディーンアンガスやシャロレー等も少しおります。 このような景色は沿岸部を除けば国中どこへ行っても同じとのことです。 夏の明るい光のせいか、ユパンキの唱うどこか哀愁のあるアルゼンチンのガウチョの世界とは全く違う感じです。 3時間行ったところにドゥラスノという小さな町を通りますが国道に面して町の動物園があったので入ってみました。 日曜日のこととて町の人達が子供連れで散策していました。 入場料がただの小さな動物園ですから動物の種類は限られていましたが、テレビなどで見ていた南米独特のアルパカ、リャマ、ピューマや名も知らぬ中型のシカなど初めてみることができました。 中でも、こちらでcarpinchoと呼んでいるカピパラを10頭ばかりみたときは本当に感激しました。 非常におとなしく穏やかな眼をした動物でした。 また、こちらの牧場でよくみかける野生のニャンドウ、(nandu)というだちょうに似た鳥も珍しいものでした。 オーストラリアのものほど大型(アフリカ産)ではありませんが姿、かたちはそっくりです。 牧場では蛇を食べてくれるから追い出したりしないとのことでした。
この町からまた約2時間、同じような道を走るとネグロ河の橋があります。 この辺は湖が細くなって本来の河になっている所でそのほとりはキャンプ場になっています。 沢山の家族連れが泊っていて泳いだり魚を釣ったりして賑やかでした。 子供達に聞くと2月末迄学校は休みとのことでのびのびと遊んでいました。 ウ国の人々はGNPは低くても実に上手に余暇を過ごしています。
ウルグアイにおけるもっとも有名な観光地がプンタ・デル・エステです。 モンテヴィデオの海岸に沿っているランブラ通りを東へ車で20分走ると左側(海岸と反対側)にカジノを開いている Casino de Carrascoという由緒あるホテルがあり、それを通り過ぎるとすぐ左側にウ国の海軍兵学校があります。 私は終戦の年に海軍兵学校予科に4ヵ月半ばかり入学していましたのでこの学校に興味がありますが、これについては別の機会にのべたいと思っています。 兵学校を通り過ぎていかにも新開地という感じの所をすぎると有料道路に出ます。 そこで35ペソ(500円)払うと素晴らしい道が松林の中を貫いています。 もともとウ国には固有の大木はなく、この松も外国から導入したものでおそらく海からの風と砂を防ぐために植林されたのでしょう。 まわりの景気はリオ・ネグロへのものとはかなり異なっていて別荘を建てたくなるような明るい垢抜けた感じをしています。 1時間ばかり走ると左側にウ国最高峰の山が近づいてきます。 最高峰といっても500m位です。 右手にはそれより低いけれどもおわんを伏せたパンのような岩の多い山がみえます。 Pan de Azucar (砂糖パン)と呼ばれていますが、日本人1世の方はまんじゅう山と云っています。 頂上には大きな十字架が建っています。 この山の向こう側つまり海側に以前行ったピリアポリスという町があるはずです。 しばらく行くと通称くじら岬への横道があったのでそこへ行ってみました。 ここは地図上ではラ・プラタ河のまさに河口のあたる所ですが海と全く同じで水も茶色ではありません。 磯に貯っている水を一寸なめてみたところふつうの海水と同じしょっぱさでした。 昔はクジラが見えたからついた名前と思ったのですが、そうではなくエステからみた姿がクジラに似ているからです。 ここからはプンタ・デル・エステの高層建築がよく見えます。 多くの人が魚釣りをしていました。
プンタ・デル・エステにはモンテヴィデオから車で2時間ちょっとでつきます。 私が想像していたより大きな町です。 海に面して20階建ぐらいのマンションやホテルが林立していて、夏には沢山の人が泊まり砂浜は人で一杯になります。 内陸部は宏大な敷地をもつ家が沢山ありその多くはアルゼンチンのお金持ちの別荘だそうです。 この前書きましたように、どういうわけかラ・プラタ河のアルゼンチン側は泥ばかりでしかも気候もこちら側より過ごし難いのです。 建築中のマンションがいくつかありましたが柱が如何にも細く、極端にいえばマッチ棒で作った家みたいな感じでした。 地震国に生れ育った私達にはとても信じられないほど華奢です。 海の水はそれほどきれいではありませんでした。
私はメキシコのカンクンに行ったことがあります。 そこは規模はプンタ・デル・エステよりやや大きいのですが、ホテル等で使用した水は一滴もカリブ海には流さないという考えで作られたと聞いております。 事実、海の水は比較にならないほどきれいでした。
今はシーズンも終りであまり人はいませんでしたが、それでもお年寄りがかなりいました。 お金持ちで悠々自適の生活を送っているのでしょう。
町のはずれに、1986年開かれたウルグァイ・ラウンドに関する会議が行なわれた Casino San Rafael というホテルがあります。 茶色い7階建のそれほど大きくない建物ですが、海岸に面して15,000平方メートルの敷地をもち、カジノ、ナイトクラブをはじめプール、屋内体育館等が完備しています。 中は材木をふんだんに使って落着いた雰囲気で、いかにも老舗といった感じです。 フロントから料金表のついたパンフレットを貰ってきましたのでご参考までに記してみます。 いろいろなクラスの部屋がありまた季節によって違うのでもっと安い普通のシングルとダブルの部屋について書きますと次のとおりです。
シングル | ダブル | |
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この宿泊料に14%の税金がかかり、さらにレストランで食事をとれば23%の税金がかかりますからふつうの日のダブルの場合100ドル程度と考えてよいでしょう。 特徴的なのはシーズン中とオフでかなりの差のある点で高い部屋ほど差があります。 独身の方の参考のために中位程度のスウィート・ルームの費用をみますと、シーズン中は410ドル(51,000円)、オフは130ドル(16,000円)で、これに14%の税金、食事代とその23%の税金がかかります。 こちらのシーズン・オフは日本ではシーズン中ですからここ迄の航空賃(格安で往復22〜 23万円)と日数さえ気にしなければ豪華なハネムーンをウルグァイラウンドで有名なホテルで過すことができます。
私は、折角ここ迄来たのだから、シーズン・オフ中に是非ここに泊まってみたいと思っています。
6月13日の金曜日、同じJICAチームのK氏とこのホテルに行き1泊してきました。 泊った部屋はツインで思ったより、質素で設備もせいぜい3ツ星程度です。 ただ、会議室は大小7つあって、いずれも立派で、ここでウルグァイ・ラウンドが開かれたのも分かるような気がします。 カジノがある所は非常に広いホールで夏だけしか開かれないとのことで閉っていました。 その他、映画や音楽会用の小ホールもありました。その日の夜は300人位が集まるファッ ション・ショーがあるとかで別館の大ホールでは沢山の人が飾り付け等会場の準備をしていました。 翌朝わかりましたが、この大きなホテルに宿泊者は僅か数人でした。 宿泊代はパンフレットに書かれていたより安く、朝食つきで60ドル、税サービス料で計70ドルでした。
通称くじら岬Punta ballenaにKKK団を思わせるような白い奇妙なビルが崖を利用して海に面して建っています。 その建物の約1/3はウ国では有名なCarlos Paes Viranoという画家のアトリエとなっていて5ドル払って入ることができます。 抽象画が殆んどです。折角ですから彼の署名入りの小さい版画を4枚100ドルで買いました。 建物の2/3は彼が経営するホテルで入口は崖の上にあります。 レストランはエレベーターでマイナス9Fにありました。 ミラネーサとコーヒーで140ペソ(約2,000円)の昼食代はまあまあというところでしょうか。 このホテルはシーズン・オフでシングルが80ドルで私達が泊ったSan Rafaelより高いようです。