ウ国の農林畜産に関する研究体制は、今迄国立の林産、畜産、果樹、水産等の各試験場であったものが第3セクターともいうべき国立農牧研究所 Instituto Nacional de Investigacion Agropecuaria (INIA) という組織に1991年末より統合、移管された形となっています。 その組織はサルト、タクアレンボーなど5つの地域試験場からなっていてそれぞれ場長がいます。 各地域試験場にはタクアレンボーなどのようにそれぞれ分野が異なる林業、畜産、牛乳および草地の4つの部門(旧試験場)からなっている場合とサルトのように柑橘部門(旧果樹試験場)1つだけの場合がありますが多くは複数の部門からなっています。 合計13の部門があります。 各部門の長(部長)の下には大きい部門では研究室長、研究員が配置されていますが、小さな部門では室長のポストはありません。 INIAは政府関係者2名(3名という人もいます)、同数のINIA代表者からなる理事会で運営されています。 各理事は公選で、理事長は政府関係者の中から選ばれます。 各場長の所轄試験場への権限は大きく、予算、人事権をもっています。 INIAの予算は生産者団体の売上げの何%(どの位の率か誰もよく知りません)と、それと同額の政府から支出するお金でまかないます。 その予算の80%は人件費で各部門の運営、研究費にあまりまわせない状態です。
私どもが関係しているDILAVEとはDireccion de Laboratorios Veterinarios "Miguel C. Rubino"を略したものです。 日本語で獣医研究所といっていますが正式には農牧水省Ministerio de Ganaderia, Agriculturay Pesca (MGAP)の家畜衛生研究局といった方がよいでしょう。 上述のINIAには属していません。 ここでの業務としては家畜衛生に関する研究というよりはウ国での家畜の細菌、ウイルス、寄生虫等による感染病の診断と生物的製剤の製造、検定を主にしています。 DILAVEではINIA方式とは違って職員の給料は国から出ます。 運営費は昨1996年から自分で稼がなければならなくなりました。 家畜疾病の診断料とか生物的製剤の売上げとか牛、羊、マウス、ウサギ等実験用ならびに実験動物の販売費です。 実験動物の価格については既に第6回のたよりでお知らせしました。
職員の給料は52〜53才の室長クラスで月600ドル位ですから物価の高いウ国ではとてもこれだけでは暮らしてゆけません。 勤務時間は8時から3時までですので殆んどの人は他に仕事をもっています。 研究者は殆んど獣医師で、大学の講師とか開業獣医の手伝いなどをしています。 このような状態ですから研究所で本当に仕事をしている時間は午前中だけで午後は食事が終わるとあまり仕事はできません。 INIAに所属している試験場は皆地方にありますから職員の第2の職場はほとんどありません。 しかも研究機関である関係上研究業績も上げねばなりません。 そこで、ある試験場では勤務時間を8時から17時半(うち休息時間1時間半)までとして研究業務に集中するようにしています。 そして給料は公務員として国からもらっていたときの3倍とするときめました。 もっとも実際には3倍にはならなかったそうですが、それでも32〜33才で月600ドル位の収入があるとのことです。 ただ、ここ10数年にわたる国の財政難で各種機器、器財が老朽化しており思うような成果は上がっていないようです。
かなり前(1997年1月)のインターネットにアルゼンチンの有名な研究所の一つである国立微生物学研究所、Malbran (ラテン・アメリカではその研究所に功績のあった人の名前をつけることが多いようです)の所長の投稿文が載っています。 それによるとその研究所を含む7つの国立研究所では今年度、第2次行政改革によって歳出が37%、人当研究費が13%それぞれ削減され、101名の専門職々員、技術者および事務職員がレイオーフになるということです。 所長は、この研究所の重要性を学問面だけでなくエイズやハンタウイルス感染対策等行政面からも強調し、第1次にひきつづく第2次行政「改革」が不当であるとのべています。 そして、Fax等での国際的な政府当局への抗議および研究所への支援をお願いしています。
日本でも研究機関の行政改革が検討されているようです。 行政改革会議(会長橋本首相)は各省庁から公権力を殆んど行使しない博物館や試験研究機関、大学、国立病院などを「独立行政法人」に移行させることを考えているようです(日経新聞4月10日、1997)。 通産省では、独自に工業技術院傘下の研究所の全部または一部を他の省庁に移管されることも検討しています(日経新聞4月28日、1997)。 このような行政改革がアルゼンチンの研究所のように予算削減や人員整理を伴ってはならないと思います。
DILAVE (獣医研究所) は200人位の職員を擁しています。 ここには彼らが所属している職員組合が運営している食堂があり昼食のみ提供しています。 20回分まとめて100ペソですから1回分わずか5ペソ(70円)ですが、ふつうのレストランでは食べることのできない家庭料理が出ます。 もちろんこんな値段ではできるわけがなく組合から補助金が出ています。 以前は食堂は管理棟の1階にあったそうですが、利用する人が多くなったので今は別棟の倉庫を改造してその半分を食堂にしています。 入口には大きなエアーシャワーが設置されドアを開けると強力な風が上から下に吹きつけるようになっています。 中では職員が2名毎日交替で食事を摂る人を名簿でチェックします。 もと倉庫ですから天井は高く、その天井から夏は扇風機が4台設置されています。 冬は暖房が今の所ありません。
1997年5月26日(月)から5月30日(金)までのメニューを以下に示します。
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この他によくでる料理はミラネーサというもので、牛肉を叩いて薄く平らにし、コロモをつけて油で揚げたものです。 トンカツに似ています。
上の表で欄外の人名2名はこの週の料理する人です。 フルーツは季節の果物で、リンゴ、オレンジ、洋ナシ、バナナ等です。 何れも小さくて形はよくありませんがなかなかよい味です。 また、表の下の方のマルティン・フェイロとは小説に出てくる人物の名で田舎の人の代名詞みたいなものです。 この食べ物は田舎でよく出ます。 これらのメニューの他に水がつきますが、いつも炭酸ガス入りです。 日本人は最初は飲めないそうで、私も未だに苦手ですが、長くいるとむしろガス入りの方を好むようになるとのことです。 嫌いな人はスーパーや店では「Sin gas」の表示のミネラル・ウォーターを求めなければなりません。 ウ国では何才頃からガス入りの水を飲むかを二・三人の人に聞いたところ少なくとも3才の子はもうこれを飲んでいるそうです。
このメニューは出勤簿が置いてある管理棟の1階の廊下の壁にはり出されていて、職員は出勤時にメニューをみてその横の職員のリストに記入します。 料理する人は申込人数に応じて作る量を加減します。 ウ国人はやはり牛肉が大好きで、それが出る日は食堂は混みます。 長く気がつかなかったのですが、朝、出勤時に管理棟の入口の前で自転車で平たい丸いパンを売っている人がいます。 牛肉が出ない月曜日や木曜日などはこのパン屋が繁盛します。
私はあまり利用したことがありませんが、ついでに街のレストランについて若干のべてみます。 まず、席につくとCamarero (ボーイ)かCamerera (ウエイトレス)がメニューをもってきます。 大きく分類されている項目、Sopa (スープ)、Ensalada (サラダ)、Carne (肉)、Pescado (魚)およびPostre (デザート)ぐらいは分かりますがその中味となると殆んど分かりません。 たとえばCarneでもPollo (チキン)ぐらいは知っていますがどんな料理であるかは全く見当がつきません。 何とか頼んだ後にはビール、ワイン、ジュース、コーラあるいは水(黙っているとcon gas、炭酸ガス入りのミネラルウォーター)を注文します。 値段は結構高くて大体日本と同じ位です。 食べ終わったら "La cuenta, por favor" というと請求(領収)書を持ってくるのでその場で払います。 おつりはそのボーイが持ってきます。 最後に10%位のpropina (チップ)をテーブルの上において去ります。 料理の名前もなかなか覚えられませんが、お金の勘定も私は苦手です。 とくに万以上の単位になるとダメです。 日本には万の単位があるのに外国では百、千から一足とびに百万になりますから、たとえば3万2千円は Treintaoy dos mil yenes となるのでピンときません。 私は簡単な日常会話はスペイン語で何とかなりますものの、中に万以上のお金や数字が出たらそれ以降は全く分からなくなってしまいます。
私どものいるアパート・ホテルから歩いて5分位の所になかなか味つけのよい中華レストランがあります。 そこには、とてもしとやかで美人のウルグァイ人のウエイトレスがいます。 K専門家はその店が気に入って毎晩行っていましたが最近はあまり行かなくなったようです。 おそらく趣味の古時計を買いすぎて手元不如意になったのでしょう。 最近はもっぱら自炊しています。