- 何が起きたのか?
エデインバラのCJD調査ユニットがCJD患者の脳の病理学的変化で、これまでとは異なるものを見いだした。
問題になったのは、調べたすべての切片で多数のアミロイド斑の存在を見いだしたこと。
このアミロイド斑の形態は古典的CJDではこれまでに認められていない。
- 何例起きたか?
これまでに10例。
- どれくらいの期間にわたって?
症状の出現時期は1994年初めから1995年後半まで。
- 年齢分布は?
大部分は20才台半ば。2例は10才台後半で1例は40才台前半。
- 特定の地域に多い傾向は?
はっきりしない。数がまだ非常に少ない。
- すべての例が死亡したのか?
2名はまだ生きている。
- これは大きな流行の前触れか?
なんとも言えない。
今のところ、数十万人といったことは疑問だ。
しかし、10例を越えることは間違いないだろう。
最終的にどれくらいになるかまったく分からない。
- 新しいタイプの病変はBSE に汚染した牛肉を食べたためか?
まったく分からない。
しかし事実は、この病変がこれまで記載されていないものであり、新しい危険因子が出現したと結論できる。
よくは分からないが、考えられる潜伏期すなわち8〜10年間を考慮すると、もっとも可能性のある説明はBSE病原体への暴露によるということだ。
- どのようにしてBSE病原体が人の食べ物に入ったのか?
これもはっきりしたことは分からない。
これまでのところ、筋肉組織がBSEを伝達することは、どのような伝達実験でも示されていない。
これとは対照的に、高い感染価が脳、脊髄、細網内皮系で見つかっている。
ひとつの説明は中枢神経系のかけらがなにかの肉製品、たとえばハンバーガーやパイに入っていたということだ。
ケースコントロールスタデイで証明するにも時間がかかる。
- 危険性はまだ存在するか?
1989年に6カ月令以上の牛の中枢神経系、扁桃、脾臓およびすべての年令の牛の胸腺、腸管、脊椎が人と動物の食物に利用することを禁止した(特定の牛のくず肉の禁止措置 Specified Offal Ban)。
(注:前回特定離乳食と訳しましたが、Offalはくず肉ですので訂正します。)
この禁止措置は昨年、脊椎から機械で集めた肉にまで広げられた。
以上の点に加えて、筋肉からの伝達実験が陰性であることを考えると、1996年に牛肉を食べることによる危険性は、1989年以前よりも数桁は低いというのが妥当である。
ゼロリスクというのは不可能だが、私にとって、牛肉を食べるのを止めなくてもよいという理由としては十分である。
- これらの例は、特定のくず肉禁止の措置でBSEの広がりを抑えるという考えが間違っていたことを意味するのではないか?
必ずしもそうではない。
特定くず肉禁止措置の施行が、当初期待通りに十分には実施されていなかったことが明らかである。
今ではこの点が認識されている。
- 牛肉の消費を完全に禁止する必要はないか?
現在、人の食用に流通している肉に感染性があるという証拠はない。
現在の証拠から完全な禁止は困難と思う。
- 後で後悔するより安全を優先する方がよいのではないか?
ゼロリスクという考えに戻ることになる。
この方が受け入れられるが、実際に実行するのは不可能とはいわないまでも、きわめて困難である。
危機に際して、純粋に感情面から反応するのを避けるのは難しいが、慎重かつ論理的な反応がもっとも満足すべき結果をもたらすものと信じている。
- ハンバーガーやパイのような肉製品を食べた人に心配はないか?
心配するのは当然だが、絶対的な保証を与えるのは不可能である。
私が言えることは、特定くず肉禁止措置以前のような汚染があって、大きな危険をもたらすとは考えにくいということだ。
しかし、非常にわずかの人々への危険でも、全体としてはかなりの人々への危険につながる。
最初の特定くず肉禁止措置以来、この措置が効果的に実施されるにつれて、汚染の危険性は減少するだろうし、また国内での感染牛の数も減ってきている。
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- 子供に牛肉を食べさせて安全か?
伝達実験で筋肉に感染性がみつからなかったとはいえ、検出限界以下の量があるかもしれない。
子供が成長期にあり、しかも大人よりも長い生涯にわたって暴露される可能性があるという事実は、重要な疑問を投げかける。
現在、海綿状脳症諮問委員会は、勧告の変更は行っておらず、子供に食べさせることを控えるような勧告も行っていない。
この問題は今週末に詳しく討論される予定である。
- BSEの80%が乳牛に起きていることを考えると、ミルクを飲むことに危険はないか?
感染牛のミルクでBSEを伝達することはできていない。
これまでのところ、誰もミルクからの危険性がないと判断することはできていない。
- 感染しているかもしれない人をスクリーニングする試験方法はあるか?
ない。
- ナラン Narang 博士が開発中の試験方法は何か?
この試験の感度と特異性について詳しくは知らない。
それゆえ、100万人に1人という病気のスクリーニングに適当かどうかいうことは私にはできない。
99.95%の特異性でも、1例の陽性に対して500例の擬陽性を残すことになる。
この500例の擬陽性は大騒動になるだろう。
適当なスクリーニング試験が利用できるようになるとしたら、その時は、その応用が緊急の課題になることは間違いない。
- 遺伝的素因で危険性の高い人を検出するスクリーニング試験はあるか?
ない。
- 人が羊からスクレイピーにかかる可能性は?
羊でのスクレイピーは少なくとも200年前から知られており、人に伝達されたということは、まったく知られていない。
この点が変わったと推測する理由はまったくない。
- 牛で問題になったものと同じ汚染飼料が、羊にも与えられたとしたらどうか?
これは別の可能性の問題であり、伝達実験では牛の病原体を羊に伝達しうることが示されている。
しかし、最近、羊のスクレイピーのパターンに変化はなく、それゆえ現在、羊が人への問題になるという証拠はない。
農業食糧省はスクレイピーの監視を続けており、本委員会はすべての最新情報を受け取っている。
- 今週よりも前になぜ、行動が起こせなかったのか?
CJDは非常に稀な病気であり、臨床医が非公式に症例をエデインバラのCJD調査ユニットに報告している。
診断の確認は、多くの場合解剖で行われている。
異なる病変が見つかったとしても、これが年令の若いことと関連があるかもしれない正常の変動かどうか明らかではない。
同じような変化を示す例が増えるにつれて、これが多分正常変動ではないことが明らかになってくる。
この知見の重要性から、医師達は同僚に確認してもらうことを望んだ。
このことが行われ、これが新しい変化であるという点で意見が一致したところで、本委員会は政府に、この情報を一般に知らせるように勧告したのである。
- 人から人への広がりの可能性は?
CJD患者からほかの人へ伝達された例はまったくない。
脳生検用の外科器具を通じて伝達された例はあるが、これは日常活動とは別のものである。
新たに見つかった病型のものがこの点で、異なると推測する理由はない。
- 心配している患者を抱えている一般医師に、どう言ったらよいか?
患者がしっかりしていたら、上述の情報を教え、そしてBSE に関連した病気の可能性は非常に低いということを告げるべきだ。
もしもCJDを疑わせる神経症状を示している場合には、一般医師は地域の神経科医師の意見を求めるべきだ。
神経科医師はエデインバラのCJD調査ユニットの臨床医からアドバイスが受けられることを承知している。
- 肉屋や屠場で働く人になにか特別の注意は?
もっともハイリスクとみなされる屠場従業員で新型のCJD はない。
しかし、本委員会は勿論、公衆衛生局にこのような職場での安全対策を再考するよう勧告した。
- 農夫でのCJD危険性は?
全体として農夫でCJD例が増加していることは事実である。
しかし、まだ数は非常に少なく、また同じような増加傾向はBSEの存在しないほかの国でも見られている。
今回の10例の新型CJDはいずれも農夫ではない。
- 農夫でのこの増加傾向は殺虫剤のように、BSEとは関係ないほかのことと関連はないのか?
なにかが農夫に影響を与えていることは明らかだが、なにかは分からない。
殺虫剤も疑われているが、これもまた、証拠はない。
- BSEの原因はいったい何か?
病原体の本体についての議論はまだ続いている。
プリオン説が有力であり、これは核酸を欠いた小型の糖蛋白で、感受性の人の中枢神経系の中で、特殊の蛋白を産生を引き起こす。
ほかにある種のウイルスが原因であるという考えの人たちもいる。
病原体の起こす病気は明らかだが、病原体を見ることは不可能だ。
- BSE/CJD病原体の不活化方法は?
塩素剤、通常の調理温度、紫外線、弱い酸など普通の方法には抵抗性であり、不活化は非常に難しい。